artscapeレビュー
ジュリアン・レノン写真展 「CYCLE」
2017年08月01日号
会期:2017/06/23~2017/09/17
ライカギャラリー京都[京都府]
ミュージシャンのほか、写真家としても多方面に活躍するジュリアン・レノン(ジョン・レノンの長男、リヴァプール生まれ)による写真展。展覧会名「Cycle」は、「進化を遂げながら巡り続ける生命の循環」を示しているという。これを統一テーマに、ライカギャラリーの3つ(東京・京都・GINZA SIX)では同時に、彼が東南アジアを旅してライカで撮影した写真が少しずつ異なるサブテーマのもとに展示されている。京都では、風景、人々の暮らしの様子が、「川」の情景を巡って展開される。15点中、1点を除き、写真はすべてモノクロ。写しだされるのは、川を通じて営まれる名もなき人々の日常の暮らしである。水上生活者と思しき人々やボートを漕ぐ人々の様子、川沿いの建築物など、そのどれもが喧騒に溢れていそうな場面なのに、とても静謐で詩的に見える。撮影対象は崇高とも換言できそうな、しかもそれが過剰過ぎないイメージで現れる。写真家の眼はそれほど異文化、ひいては人間の生に対する共感に満ちている。もうひとつ触れておきたいのが、この京都のギャラリーのユニークさ。築100年を超える町屋の2階、古い木材の梁と柱の構造をそのまま活かした展示室は、写真文化の奥深さを物語るに相応しい。[竹内有子]
2017/07/01(土)(SYNK)