artscapeレビュー

プレビュー:『日輪の翼』(京都公演)

2017年08月01日号

会期:2017/09/14~2017/09/17

河原町十条:タイムズ鴨川西ランプ特設会場[京都府]

やなぎみわが演出・美術を手がける野外劇。台湾製の移動舞台車(ステージトレーラー)を舞台装置に用い、中上健次の小説『日輪の翼』をメインに複数の小説からの引用を織り交ぜて展開する。2016年に横浜、中上の故郷の新宮、高松、大阪と4都市を巡回し、今回、東アジア文化都市2017京都「アジア回廊 現代美術展」の参加作品として、京都で再演される。
本作の特徴は、野外劇であることに加え、音楽劇である点だ(巻上公一が音楽監督を務める)。三味線を弾きながら唄う江戸浄瑠璃新内節、御詠歌の唱和、ギターの弾き語り、激しいシャウトのデスメタルといったさまざまな楽曲に加え、終盤のクライマックスでは朝鮮半島の打楽器を打ち鳴らす一団も登場し、複数の文化的混淆を見せる。そこに、ポールダンスやサーカスの曲芸のようなロープの空中パフォーマンスといった身体パフォーマンスが加わる。移動するステージトレーラーは、単に原作に準拠した舞台装置としての役割にとどまらず、地域、民族、時代を超えて、各地の「流浪の芸能民」の系譜をつなぎ、祝祭的な場を出現させるための装置となる。
加えて今回の京都公演では、日中韓の文化交流という芸術祭のコンセプトと、在日の韓国人・朝鮮人が多く暮らす上演場所の性格に基づき、韓国からの招聘アーティストと地元の祭り「東九条マダン」が新たに参加する。鴨川の河川敷に隣接する会場の立地とも相まって、原作小説とやなぎの演出作品の持つ文脈をより深く照射する上演になるのではないだろうか。
公式サイト:http://nichirinnotsubasa.com

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