artscapeレビュー
日本の家 1945年以降の建築と暮らし
2017年08月01日号
会期:2017/07/19~2017/10/29
東京国立近代美術館[東京都]
このところ、日本の住宅建築に関する展覧会が連続している。2014年7月から埼玉県立近代美術館ほかを巡回した「戦後日本住宅伝説」展は、1950-70年代まで、高度成長期に手がけられた住宅を見せるものだった。2017年4月にパナソニック汐留ミュージアムで開催された「日本、家の列島」では現代の建築家による住宅に焦点が当てられた。そして本展は戦後70年にわたる住宅建築だ。「日本、家の列島」と「日本の家」はいずれも海外巡回展の日本展。ただし、「日本、家の列島」はフランス人建築家の視点によって紹介するもの。「日本の家」は、2016年、日本イタリア国交150周年を記念して日本で企画し、ローマおよびロンドンで開催されたもの。いずれも「戦後の」「日本の住宅」を扱っているが、時代や視点の所在が異なっている。これらのなかで、本展「日本の家」が戦後70年というもっとも長いスパンを取り上げているのだが、展覧会は時系列ではなく、「系譜」を基準とした13のテーマに分かれている。まったく時間軸が無視されているわけではないのだが、1945-1970、1970-1995、1995-2015の3つに分けられたマトリクスが用いられている。はたしてこの分類、系譜はどこまで日本の住宅建築を上手く説明できているのか、現時点ではいまひとつ判断できないでいる。会期中にもう少し考えてみたい。海外に紹介することを目的とした企画のためか、なぜ日本の、住宅建築の展覧会なのかという主旨は分かりやすい。著名建築家が個人住宅を手がける例は海外には少ない。海外と比較して日本には戸建て住宅が多い。それは戦後推進された持ち家制度ゆえでもある。そうした住宅の大多数を手がけたのがハウスメーカー(本展では積水ハウスのプレファブ住宅が紹介されている)で、それらのメーカーが手がけ、私たちの街をかたちづくってきた規格化された住宅に対する批評として、建築家による住宅がある。その批評の類型がここでいうところの「系譜」である、と考えればよいか。[新川徳彦]
左上ちらし:Design by Norio Nakamura
2017/07/18(火)(SYNK)