artscapeレビュー
《三角港キャノピー》
2017年08月01日号
[熊本県]
三角港へ。葉祥栄による《海のピラミッド》を訪れるのは、25年ぶりか。フェリー航路がなくなり、現在は純粋なモニュメントと化したが、機能を喪失したことによって、円錐の内外に二重螺旋を描く明快な幾何学はむしろ強度を増した。今回は橋梁などの土木デザインで知られるローラン・ネイが設計した弧を描く《三角港キャノピー》の見学が目的である。これは葉の円錐との絶妙な形態の関係、一列の細い柱で屋根を支える構造美、風景の切り取り方が素晴らしい。また、すぐ正面に建つ三角駅はレトロ建築でかわいらしい。そして近くの小材健治による《漁業取締事務所》は攻撃的な造形だった。『建築MAP九州』では全然魅力的に紹介されていないが、三角西港のエリアがととてもよかった。世界遺産に指定されているが、ヘンに浮かれた感じもなく、落ち着いた街並みである。オランダ人技師と石工による明治時代の土木事業が丁寧で、石造の排水路やウォーターフロントの美しいこと。そして明治、大正にさかのぼる近代建築群も保存されている。国内において近代の港がこれだけ街ごと残っているケースはめずらしい。
写真:上=《三角港キャノピー》と《海のピラミッド》 左上から=《三角港キャノピー》の広場と駅、三角駅、三角西港の近代建築 右上から=《海のピラミッド》内部、《漁業取締事務所》
2017/07/15(土)(五十嵐太郎)