artscapeレビュー

マグナム創設の原点

2017年11月15日号

会期:2017/10/06~2017/10/25

フジフイルム スクエア[東京都]

マグナム・フォトは、いうまでもなく1947年にロバート・キャパ(ハンガリー→アメリカ)、アンリ・カルティエ=ブレッソン(フランス)、デビット・シーモア(ポーランド→アメリカ)、ジョージ・ロジャー(イギリス)の4人の写真家を中心に設立された「写真家のための協同組合」である。その後現在に至るまで、フォト・ジャーナリズムとドキュメンタリーの分野で世界中の写真家たちに影響を与え続け、大きな目標となってきた。本展はそのマグナムの草創期の写真にスポットを当てたもので、創設者の4人のほか、イヴ・アーノルド(アメリカ)、インゲ・モラス(オーストリア→アメリカ)、エリオット・アーウィット(アメリカ)、ワーナー・ビショフ(スイス)、デニス・ストック(アメリカ)、マルク・リブー(フランス)といった写真家たちを取り上げている。「Part1 創設者4人が写真家として活動を開始」、「Part2 第二次世界大戦」、「Part3 マグナム創設とその後」という三部構成、70点の作品を見ると、この時期のマグナムの写真家たちの活動ぶりが特別な輝きを発しているように思えてくる。むろん、個々の写真家たちが、それぞれのキャリアのピークを迎えつつあったということはある。だが、それ以上に雑誌や新聞に掲載された一枚の写真が多くの人々の心を揺さぶり、世論の動向にも影響を与えていくような、フォト・ジャーナリズムの黄金時代が背景にあったということだろう。その輝かしい時期は、だがそれほど長くは続かない。1954年、ロバート・キャパがインドシナ半島で、ワーナー・ビショフがペルーのアンデス山中で取材中に命を落とす。56年にはデビット・シーモアがスエズ動乱を取材中に亡くなる。そのあたりから、マグナム内の、写真は芸術なのか、記録なのかという論争も激しくなり、その活動も大きな曲がり角を迎えることになる。とはいえ、今回展示された1930~50年代の写真群は、何度でも見直すべき価値がある傑作揃いといえる。ただ、会場がやや手狭だった。もう少し大きなスペースで、資料展示も含めてゆったりと写真を見ることができるといいとおもう。

2017/10/13(金)(飯沢耕太郎)

2017年11月15日号の
artscapeレビュー