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ボストン美術館の至宝展─東西の名品、珠玉のコレクション

2017年11月15日号

会期:2017/07/20~2017/10/09

東京都美術館[東京都]

まるでビエンナーレのように頻繁に開かれる「ボストン美術館展」だが、巡回展の供給元だった名古屋ボストン美術館が来年度いっぱいで閉館しちゃうと、激減するのではないかと心配になる。ともあれ「ボストン美術館展」といえば、これまでミレーやゴッホを中心とするフランス近代絵画展か、日本の美術館以上に充実している日本の古美術展かのどちらかだったが、今回は古代エジプト美術から、中国の宋画、江戸期の美術、フランス近代絵画、18-20世紀のアメリカ美術、そして現代美術まで、それぞれ数は少ないけど世界の美術史のダイジェスト版を見せている。日本に世界美術史のダイジェスト展ができる美術館があるかというと……ない! さすがボストン、やっぱ名古屋は閉館しないでほしい。
展覧会を見ていくと、中国12-13世紀の宋画の次に18世紀の江戸期の水墨画があるので、両者を見比べてみるのもおもしろい。例えば陳容の《九龍図鑑》と、曽我蕭白の《風仙図屏風》との比較は、ルネサンスとマニエリスムの違いにも似ていて、さすが宋画はどっしりして品格があるなあと東洋美術には疎いぼくでも感じる一方、蕭白の奇想に富んだユーモアにはかなわないなと愛国心の薄いぼくでも思う。比較でいうと、今回の目玉であるゴッホの《郵便配達人ジョゼフ・ルーラン》と、《子守唄、ゆりかごを揺らすオーギュスティーヌ・ルーラン夫人》もいろいろ考えさせられる。ルーラン夫妻を描いた2点だが、前者ではあらためて絵のヘタクソさに目を奪われる。いったいジョゼフの手はどうなってるんだ!? こんなにデッサンが狂っていながら高く評価され、美術史上もっとも人気の高い画家はほかにいないだろう。ルーラン夫人はもっとスゴイ。背景の緑とオレンジの目玉のような、あるいは細胞のような不気味な模様はいったいなんだ? この2点のあいだにゴッホが例の耳切事件を起こしたわけで、いっちゃなんだが「使用前/使用後」のように見比べてみるのも一興かと。

2017/10/06(金)(村田真)

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