artscapeレビュー
開館35周年記念展 ディエゴ・リベラの時代 メキシコの夢とともに
2017年11月15日号
会期:2017/10/21~2017/12/10
埼玉県立近代美術館[東京都]
20世紀前半のメキシコ壁画運動の代表的画家ディエゴ・リベラに焦点を当てた企画展。展示は「ヨーロッパ時代のディエゴ・リベラ」「壁画へ」「野外美術学校/美術教育/民衆美術」「ディエゴ・リベラをめぐる日本人画家」など8章に分かれ、約30点のリベラの作品を中心に、壁画運動をともに推進したシケイロスやオロスコ、妻で画家のフリーダ・カーロ、リベラと接点のあった藤田嗣治や北川民次らの作品で構成される。壁画で知られる画家なのに実物が見られないのが残念。こればかりは現地に行かなければどうしようもない。とりあえず習作や写真で現物を想像しとこう。
余談だが、日本人画家との接点が興味深い。藤田は20年代のパリで活躍した後30年代前半に中南米を旅し、メキシコに立ち寄って北川民次の家に泊まり、リベラと会って壁画運動に触れている。その後、日本に戻って百貨店やカフェの壁画を手がけるようになったのは、明らかにメキシコ壁画運動に感化されてのことだろう。その大画面への志向が戦争画制作につながっていくのだが、それはさておき、藤田の百貨店の壁画を手伝ったのが二科会の東郷青児であり、また、帰国後の北川を二科会に推薦したのは藤田であった。そして東郷の死去後、二科会の会長に北川が納まることになる。メキシコ壁画と二科会が微妙につながっていたのだ。
2017/10/25(水)(村田真)