artscapeレビュー
6th EMON AWARD Exhibition 神林優展
2017年11月15日号
会期:2017/10/03~2017/10/14
EMON PHOTO GALLERY[東京都]
神林優は1977年、長野県生まれ。2002年に多摩美術大学卒業後、2010~11年のニューヨーク滞在を経て、ユニークな写真作品をコンスタントに発表してきた。多摩美術大学時代に師事した萩原朔美や、その同世代の山崎博など、「コンセプチュアル・フォト」の系譜を受け継ぐ作風だが、厳密な方法論に基づくのではなく、より軽やかに日常の事象に目を向けて作品化していく。ただ、発想は豊かで技術的にも洗練されているものの、フィニッシュワークがやや小さくまとまってしまう印象があった。そのあたりが、今年2月に開催された6回目のEMON AWARDでも、準グランプリにあたる特別賞の受賞に留まった理由といえる。だが今回の「受賞者展」では、作品がより力強さを増してきているように感じた。神林にとってはひとつの転機となる個展になりそうだ。今回展示されたのは、スケートリンクのブレードの跡を撮影した「FIGURE」(1点)、折跡のある折り紙を開いて撮影した「FOLD」(25点)、カッティングシートを被写体にした「CUT」(2点)の3作品である。いずれも「本来的な行為の目的からは解き放たれてはいながらも、わたしたちのある目的のために為された運動によって残された跡」を被写体としている。偶然の積み重ねによって生じたフォルムであるにもかかわらず、そこにはある種の必然性が感じられる。それらの「運動によって残された跡」の静謐な美しさが、あまり押し付けがましくない繊細な手つきで、だが確信を持って捉えられているところに見所があり、とても好ましいイメージ群として成立していた。この方向を突き詰めていくと、さらに大きな可能性が開けてきそうだ。
2017/10/06(金)(飯沢耕太郎)