artscapeレビュー

六本木アートナイト2017

2017年11月15日号

会期:2017/09/30~2017/10/01

六本木ヒルズ+東京ミッドタウン+国立新美術館ほか[東京都]

土曜の深夜と日曜の午後の2回見に行った。なんだかいろいろにぎやかにやっていたけど、見て得したっていうのはそんなに多くなかったなあ。いくつか挙げると、まず、六本木ヒルズ内の通路の一画を写真スタジオに見立て、正面を向いてポーズをとる十数人の人物像を置いた江頭誠。壁も床も人物もすべてロココ風の花柄の毛布で覆われて、じつに華やかというか不気味というか。その前で同じ花柄の上着を着せてもらって撮影できるというサービスつき。これは人気があった。同じヒルズの通路内と六本木西公園でプレゼンしたナウィン・ラワンチャイクンの《OKのまつり》は、六本木を題材にした映画やワークショップの構成。映画とワークショップは見てないけど、そのために描いた宣伝用の看板絵には、森美術館の南條史生館長をはじめ理事長やキュレーターが登場して内輪ウケする。三河台公園では幸田千依が大作絵画を屋外制作し、木村崇人は公園の樹木を使ってを星形の「木もれ陽」をつくるワークショップ。あまり接点がなさそうな幸田と木村の組み合わせだが、共通項は「太陽」だ。
圧巻だったのは、東京ミッドタウンの芝生広場で公開された「ルツェルン・フェスティバル アーク・ノヴァ2017」。これはスイスの音楽祭ルツェルン・フェスティバルと日本の音楽事務所カジモトが、東日本大震災の復興支援のために発案し、建築家の磯崎新と彫刻家のアニッシュ・カプーアによってデザインされた、収容人数500人ほどの移動式コンサートホール。クラインの壷を思わせるドーナツ状の巨大なバルーンで、内部に空気を送り込んで膨らませる仕掛け。中に入ると、なるほど送風機が何台も稼働していて、気圧が高いことが耳でわかる。この奇怪な位相建築、六本木アートナイトの出し物というより、東京ミッドタウンの開業10周年を記念して誘致されたもので、21_21デザインサイトの「そこまでやるか」展でも紹介されていた。入場料500円とられたけど、これがいちばん得した「作品」。

2017/10/01(日)(村田真)

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