artscapeレビュー
《星野リゾート OMO5 東京大塚》
2019年01月15日号
[東京都]
2018年にオープンした《星野リゾート OMO5 東京大塚》に宿泊した。駅を背にして2分ほどの立地だが、正直、この周辺であまり用事がなかったため、大塚駅で降りたのは今世紀初めてかもしれない。和を感じさせるインテリアのデザインは、佐々木達郎が担当したらしい。部屋は上で寝るロフトになっており、注意しないと、頭をぶつけるという難点はあるものの、そのおかげでベッドに占拠されず、平面の広がりを確保している。が、最大の特徴は、むしろ外に出て、大塚の街を体験させる仕かけだろう。すなわち、エントラスの導入部にさまざまな見所や飲食店を示した街歩きの大きなマップを掲げ、さらに毎日、朝、夕、夜にガイドが数名を連れて、名所やグルメを案内するツアーが用意されているのだ。《星のや軽井沢》は豊かな自然に囲まれ、自らも広大な敷地内に独特の建築やランドスケープのデザインを展開している。が、東京の大塚では、周辺の都市環境を再発見させる手助けを行なう。星野リゾートのこうした試みは、もうひとつ旭川でも行なっている。
鍋のツアーなどはすでに一杯だったので、夕方と朝のツアーに参加した。もっとも、大塚にはいわゆる有名建築がない、ある意味では日本らしいでたらめな街並みである。興味深いのは、メディアが注目するようなきらびやかな巨大開発がないからこそ、逆に都電を含む昭和の香りが漂う商店街がかなり残っていることだ。ほかにも巨木のある神社、東京スカイツリーを線路の上から眺めることができる橋、外から練習風景を見学できるボクシングジムなども紹介された。整備された大塚駅前の広場では、夜に青空カラオケ大会が行なわれていたが、ほかの山手線の駅前では考えにくい風景だろう。またエスニックや外国人が集まるお店が意外に多いことは、個人的な発見だった。なお、大塚駅の北側では、地元の山口不動産が「ba(ビーエー)」と呼ぶ一連の小型開発を展開しており、懐かしい居酒屋風ののれん街やおしゃれなカフェなどが新しく登場し、《OMO5》もそのひとつに含まれる。
2018/12/14(月)(五十嵐太郎)