artscapeレビュー
明治150年記念 日本を変えた千の技術博
2019年01月15日号
会期:2018/10/30~2019/03/03
国立科学博物館[東京都]
明治150年を記念した「日本を変えた千の技術博」展を見る。以前、同じ上野の東京都立美術館で「大英博物館展──100のモノが語る世界の歴史」を開催していたが、国立科学博物館のこの企画もキリが良い数字をタイトルに入れた企画だ。意外にこうした切り口は、一般の来場者を引きつけるのかもしれない。さて、展示の導入部は、基本的に日本における近代以降の教育史になっていた。各分野の技術展示では、東北大の所蔵も散見されたように、コレクションだけでなく、さまざまな研究機関や大学からも貴重な資料を借りている。上野の美術館群では基本的に建築を紹介しないが、科学博物館は建築を専門とする学芸員も抱え、科学史の立場から建築を扱う。
では、「日本を変えた千の技術博」展において建築はどのようにとり上げられていたか。結論から言うと、その数はけっして多くない。例えば、明治時代に登場した擬洋風や煉瓦造の建築、日本初のエレベータ、耐震の技術、そして霞が関ビルが登場するくらいだ。なるほど、開国した明治政府は、まず最初に工学として西洋から「建築」を受容したが、その後の最新技術の歴史をたどると、どうしても建築の存在感は薄くなる。実際、モダニズムやポストモダンといったデザインの潮流は、技術よりも意匠の範疇に含まれる。また数々の歴史的建築が証明しているように、建築は新しさというよりも、美学的な価値を有するからこそ、長い時間のスパンの評価にたえることがありうる。
久しぶりに国立科学博物館の常設展示もまわったが、増改築によって、かなり大規模になっており、展示デザインも工夫されていた。なお、建築の関係では、アナログ器械の地震計がいくつか紹介されており、ユニークな造形に目を奪われた。そして個人的に最大の収穫は、マンモスの骨でつくった1万8千年前の住居の復元である。これは最新どころか最古に属する建築だが、大きな骨を組み合わせたど迫力のブリコラージュの技術による産物だ。
2018/12/16(水)(五十嵐太郎)