2020年10月15日号
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artscapeレビュー

釣崎清隆「Days of the Dead」

2019年01月15日号

会期:2018/12/14~2019/12/26

新宿眼科画廊[東京都]

「九相図」とは、死体が朽ち果てていく様子を九段階の場面に分けて描いた仏教絵画である。絶世の美女が腐敗し、骨になって焼かれるまでの変化を観ることで、現世の肉体が不浄であり、無常であることを認識するために、中世に絵巻物や屏風の形で盛んに描かれた。釣崎清隆の「Days of the Dead」のシリーズは、まさに写真による現代の「九相図」といえるだろう。

釣崎は、1994年からタイ、メキシコ、コロンビア、ロシア、パレスチナ、そして日本などで、死者たちの姿を撮り続けてきた。自殺、交通事故、殺人事件、死体安置所、法医学鑑定所など、死体をめぐる状況は多種多様だが、美的、主観的な解釈を最小限に留めてその佇まいを客観的な記録として撮影している。それらを集成した写真集『The Dead』(東京キララ社)の刊行を受けた、今回の新宿眼科画廊での個展では、180点をおさめた写真集から20点を抜粋して展示している。

死者を撮影し、その写真を発表するという行為には、絵画以上の困難がある。当然ながら、より直接的で生々しい画像となる写真の場合、死者、あるいは遺族に対する冒涜ではないかという倫理的な非難がつねにつきまとってくるからだ。そのようなタブーの意識は、このところ、さらに強まってきているようだ。実際に、今回の写真集の出版に際しても、印刷や製本を引き受けてくれる会社を探すこと自体が大変だったようだ。だが釣崎の写真を見れば、それらがけっして覗き見趣味の産物ではなく、現代社会における死者のあり方について真摯に考え抜き、答えを出すことを求め続けてきたものであることがすぐにわかるだろう。彼の仕事には、死者たちの姿を隠蔽してきた現代文明に対する根本的な批判が含まれている。

2018/12/21(金)(飯沢耕太郎)

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