2020年10月15日号
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artscapeレビュー

題府基之「untitled(surround)」

2019年01月15日号

会期:2018/12/02~2019/01/20

MISAKO & ROSEN[東京都]

題府基之は本作「untitled(surround)」からデジタルカメラで制作し始めた。多くの写真家にとってそうだが、デジタルカメラが「きれいに写り過ぎる」ことは、むしろ作品作りを難しくするようだ。題府はデジタルカメラの「ホワイトバランス」機能を逆用することで、その難題を切り抜けようとした。色味の設定をカメラまかせにすることで、画面全体が青みがかったり、逆に赤みが強まったりする。それとともに、フレーミングをわざと不安定にすることで、「崩れたバランス」を取り込もうとしている。結果的に、彼の新たな試みは、これまでとはやや違った雰囲気のシリーズとしてまとまった。

被写体そのものも、かなり違ってきている。これまでは部屋の中で撮影することが多かったが、今回は横浜市青葉区の実家の周辺を中心に、「郊外」の光景にカメラを向けている。本人のコメントによれば、「撮影エリアがホンマタカシと中平卓馬の中間」ということのようだ。だがエリアの問題だけでなく、縦位置に引き伸ばした、住宅や自販機やブロック塀など、身も蓋もない、そっけない眺めは、たしかにホンマや中平の写真を彷彿とさせるところがある。とはいえ、題府の「untitled(surround)」には、「いま」の空気感が確実に写り込んでおり、被写体の選択、配置もじつに的確だ。新たな「郊外写真」の可能性を感じさせるシリーズとして、成長していきそうな予感がする。

なお展覧会と同時期に、フランスの小説家、詩人のミシェル・ウェルベックと共作した写真文集『大型スーパー 11月(Hypermarché-November)』が「The Gould Collection Volume Three」としてパリと東京で発売された。題府の「Project Family」、「Still Life」、「untitled(surround)」の3シリーズから抜粋した写真と、ウェルベックの詩が合体している。写真とテキストとの絡みが絶妙で、見応え、読み応えのある本に仕上がっていた。

2018/12/13(木)(飯沢耕太郎)

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