artscapeレビュー

山本昌男「BONSAI 手中一滴」

2019年01月15日号

会期:2019/01/16~2019/02/16

MIZUMA ART GALLERY[東京都]

いかにも山本昌男らしい作品が並んでいた。山本は、モノクロームに独特の風合いでプリントした写真を、壁に撒き散らすようにインスタレーションする作品で、日本よりもむしろ海外で名前が知られている。近年は、日本を代表する盆栽家である秋山実とコラボレーションした写真作品を制作し始めた。俳句を思わせる作風の持ち主である彼が、盆栽に目をつけるのは納得できる。

今回のMIZUMA ART GALLERYでの展示は、その「BONSAI」シリーズを中心にしたものだが、山本は盆栽をそのまま撮影するのではなく、工夫を凝らした構図の中におさめている。盆栽の背後に広がる風景の広がりを、そのまま画面の中に取り入れて撮影しているのだ。言うまでもなく、盆栽は、人工的に育て上げた小さな樹木の形を借りて、大自然を表象しようとするものである。山本は盆栽を山々(富士山を含む)や海をバックに撮影することで、自然と人工物の境目を曖昧にし、それらが混じり合うような眺めをつくり出している。盆栽をテーマにした写真作品は、これまでもいくつか見たことがあるが、山本の試みは新たな視覚的体験を与えてくれるものだった。

ただ、同時に出品されていた「Tori」シリーズもそうなのだが、フレームに一点一点きっちりとおさめて壁にかけるような展示のあり方にはやや違和感がある。商業ギャラリーのスペースの限界もあるのだが、やはり彼がこれまで積み上げてきた、大小の写真による、「間」を活かしたインスタレーションのほうが、その作品世界とうまく釣り合っているように感じるのだ。フレームにおさめた作品の場合、ピクトリアリズム的なまとまりのよさが目について、どうしても想像力の広がりが限定されてしまう。特徴のある空間でのインスタレーション的な展示を、日本でもぜひ実現してほしい。

2019/01/18(金)(飯沢耕太郎)

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