2020年10月15日号
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artscapeレビュー

木下直之全集―近くても遠い場所へ―

2019年01月15日号

会期:2018/12/07~2019/02/28

ギャラリーエークワッド[東京都]

日本の近代美術をまともに研究すればするほど道を踏み外しかねない。それは近代以前の日本には西洋的な「美術」は存在しなかったのに、幸か不幸か「美術らしきもの」が存在し、両者が強引に接ぎ木されることで歪みや矛盾が生じ、「つくりもの」「まがいもの」といった魅力的なマグマを吹き出すからではないか。だから東京藝大から公立美術館の学芸員を経て、東大の教授を務めるという美術の王道を歩んだ木下直之氏が、にもかかわらず、というよりそれゆえに「つくりもの」「まがいもの」の森に迷い込んだのも故なきことではないのだ。王道を行けばいつのまにか邪道にそれ、その邪道こそ実は王道だったりする迷宮世界。それが日本の近代美術なのかもしれない。

同展はこれまで木下氏が執筆してきた12冊の本を全集に見立て、「本物とにせもの」「作品とつくりもの」「都市とモニュメント」「ヌードとはだか」などに分類し、本物、ニセモノ、パネル、映像などで紹介している。日用品を組み合わせて人の姿に似せたつくりものをはじめ、西郷さんや小便小僧の人形、銅像の絵葉書、男性裸体彫刻の股間コレクション、お城のミニチュア、木下氏が高校時代に描いた抽象画まで、美術と美術でないものの境界線上にひしめくアイテムばかり。展覧会全体が見世物仕立てになっている。近年マンガやアニメ、建築やデザインなどのマージナルな分野の展覧会は盛んに行なわれるようになったが、こうした「つくりもの」「まがいもの」はそれこそ「美術」概念を破壊しかねないせいか、美術館では扱わないらしい。ならば同展をこのまま常設展示してほしい。

2018/12/18(火)(村田真)

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