2022年11月15日号
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artscapeレビュー

ACAO OPEN RESIDENCE ♯7

2022年08月01日号

会期:2022/07/09~2022/07/10

ホテルアカオ[静岡県]

熱海のホテルアカオにおいて、5人のアーティストが約1カ月間滞在・制作した作品を発表するほか、これまでのレジデンスアーティスト20数人による作品も展示している。会場は、コロナ禍のためか昨年に宿泊営業を終了したニューアカオ館の客室や宴会場と、その上のアネックス(1階がニューアカオ館の15階につながっているほど高低差が激しい)のロビーやダイニングなどを使用。このプロジェクトは昨年3月に始まり、すでに7回目を迎えるので、2、3カ月に1回のハイペースで実施していることになる。主催はPROJECT ATAMIで、発起人に寺田倉庫前社長でホテルニューアカオの代表取締役会長の中野善壽氏、実行委員長にホテルニューアカオ代表取締役社長の赤尾宣長氏、総合ディレクターにアイランドジャパンの伊藤悠氏が名を連ねている。アート界とのパイプは太そうだ。

行ってみて驚いた。なにに驚いたかって、ホテルの立地。海に張り出して建つ17階建てのニューアカオ館の窓から望む太平洋や、階下のダイニングから眺める断崖下の洞窟などは、いっちゃあ悪いがそこに置かれた作品が邪魔に感じられるくらいの絶景なのだ。たとえば、3面ガラス張りの宴会場には海岸で採取した流木が並べられているが、観客の視線は作品を通り越してつい水平線に向けられる。逆に目に止まったのは、風光明媚とは対極的な場所に潜んでいる作品だ。そのひとつがゲームコーナーを作品化した小金沢健人による《ファンシーパニックラッキーウォーズ》。12台のゲーム機がひっそりと置かれたコーナーに行くと、いきなり1台が音を立て、光を発し始める。連鎖するように別のゲーム機も動き始め、無人のゲームコーナーが勝手に遊び出すという趣向だ。これは過去の作品らしい。



ニューアカオ館[筆者撮影]


もうひとつは、旧大浴場における冨安由真の《Unison_Circle》。すでに閉鎖された大浴場の入り口に新たに壁をつくり、ドアを設置している。観客はドアを開けて解体中の更衣室を見ることはできるが、それより奥は立ち入り禁止で、浴室にあるはずの冨安の作品は見ることができない。消化不良のまま、もうひとつ冨安作品があるという階上の一室に行くと、VRのゴーグルを渡され、廃墟となった大浴場のインスタレーションを仮想空間で体験できるという仕組み(実際に見た順は逆だが)。いったい、廃墟の大浴場でインスタレーションしたかったのか(でも見せられないからVRを使ったのか)、それとも、VRでその場にはない作品を見せたかったのか(そのために立ち入り禁止の浴場に作品を置いたのか)。冨安がどちらを先に発想したのか知らないが、この場合は両者が過不足なくぴったり一致している。そこがすばらしい。

2022/07/10(日)(村田真)

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