2022年08月01日号
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artscapeレビュー

元田久治 CARS

2022年08月01日号

会期:2022/06/24~2022/07/17

アートフロントギャラリー[東京都]

東京駅や国会議事堂、あるいはパリのエッフェル塔やシドニーのオペラハウスなど、見慣れた風景が数十年後にはこうなっているかもしれないという未来の廃墟図で知られる元田の新作は、なぜか自動車がモチーフ。しかもミニカーを描いているのだ。

《CARS:Pedestrian Crossing》(2022)では、幅5メートル近い大画面に本物の道路から転写したかのような横断歩道が原寸大で描かれ、その上を数百いや千台はあろうかというミニカーがびっしりと覆っている。一瞬ガリバーの世界に迷い込んだような違和感を覚えるが、ミニカーも原寸大なのでこれはリアル世界なのだ。ミニカーはリトグラフでいっぺんに何十台も刷り、1台1台切り抜いて貼り付けているという。地面にうごめく無数の虫のような凝集感があるが、神の視点から見下ろせば現代の車社会はこのように映るのかもしれない。

おもしろいのは、ミニカーの廃車を描いた版画もあること。それも2種類あって、使い込まれてボロボロになったミニカーをそのまま描いたものと、ミニカーのオリジナル車が廃車になった姿を想像して描いたものと。しかもその下にモデルにした実物のミニカーも置いてある。これまでのリアル世界と想像世界だけでなく、絵画と版画、ミクロとマクロ、オリジナルとコピーのあいだも往還し始めたようだ。

2022/07/03(日)(村田真)

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