artscapeレビュー
森太三「世界の果て」
2009年06月15日号
会期:2009/04/11~2009/05/03
PANTALOON[大阪府]
オープンが17時ということもあって訪れたのは日も沈みかけた頃。展示はこれまでも森が発表してきた見立ての「風景」だが、雪に覆われた大地を俯瞰するようなイメージもあるこの作品は、その都度、観る者の視線の導線を意識した演出になっていて、空間や観る時間帯によっても表情がそれぞれ異なるため、毎回新鮮な印象と趣きが感じられる。今回は民家を改築した吹き抜けの空間が特徴的な会場。天井から雨粒のような数珠状の玉がぶら下がっていて、視線は必然的に上方へと向かう。誘われるように2階へ続く階段を上ると山脈のように連続する起伏が床面に広がるインスタレーション。白いカーテン越しに射し込む鈍い光が起伏の連なりをいっそう幻想的に見せていた。一方、閉め切られた真っ暗な空間の窓にときどきピカっと稲妻のような閃光が走る作品は新しい試み。静かに移ろう時間を意識させる起伏の作品とは対照的だ。素材や手法は特別なものではないが、どちらもこれから何かが起こるという期待と、兆しを感じさせて演劇を見ているようだった。
2009/05/01(金)(酒井千穂)