artscapeレビュー

HIROMIX「Early Spring, Brighten of Your Mind」

2009年06月15日号

会期:2009/04/11~2009/05/16

hiromiyoshi[東京都]

1995年に「写真新世紀」でグランプリを受賞し、その後まさに写真界の寵児となったHIROMIX。だが2000年代以降はその活動が鈍り、影の薄い存在になっていた。イノセントさと脆さをあわせ持つ彼女にとって、写真やアートの世界はあまり生きやすい場所ではなさそうだ。
その彼女のひさしぶりの個展。清澄白河のhiromiyoshiの会場で作品を目にして、ちょっと泣きそうになった。そこにあるのは、キラキラ輝く光の粒子に包み込まれたポートレート、静物(花)、風景である。それに自作のイラストが加わり、男性モデルをやはり光に溶け込ませるように撮影した映像作品も上映されている。写真作品は基本的に彼女の第二作品集『光』(ロッキングオン、1997年)の延長上にある。変わっていないというのが最初の印象だったが、会場にずっといるうちにその「光」の質がまるで違うことに気づいた。以前は子どもがはしゃぐように、さまざまな物理的な光の変化に感応していただけに過ぎないが、今回の展示にあふれているのはむしろ「内在的」といえるような感触の光だ。HIROMIXは祈りのようにその輝きを抱きとっている。
ここでは書ききれないが、僕はHIROMIXの仕事を、1970年代に成立する「純粋少女漫画」の系譜の正統的な後継者と位置づけている(PHP新書で刊行した『戦後民主主義と少女漫画』を参照)。「乙女ちっく漫画」風の彼女のイラストを見れば、その影響関係は明らかだろう。写真や映像の中で、キラキラ瞬いている光は、少女漫画の主人公の瞳の中で輝いているのと同じものだ。

2009/05/07(木)(飯沢耕太郎)

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