artscapeレビュー
秦雅則・エグチマサル「破壊する白と創造する黒」
2009年06月15日号
会期:2009/05/26~2009/06/07
企画ギャラリー・明るい部屋[東京都]
四谷三丁目に4月にオープンした「企画ギャラリー・明るい部屋」は、昨年「遊び言葉」で写真新世紀グランプリを受賞した秦雅則を中心とする同人制の自主ギャラリーである。今回はやはり写真新世紀で2年続けて佳作となり、個展も開催して注目を集めているエグチマサルとの二人展。二人ともプリントに着色したり、コラージュしたりする作風なので親和度が高く、なかなか充実した気持ちのよい展示だった。
互いのヌードを撮影したモノクロ写真、各9枚を加工した展示がメイン。それに「死生観」をテーマに二人のアトリエを6回往復して制作したという、B全2枚分の大きな「共同作品が」壁に直接釘で打ち付けられている。一見荒々しく、生っぽいエネルギーを剥き出しにしているだけに見えて、二人ともかなり繊細に画面をコントロールしている様子がうかがえる。純粋に「写真」を志向することを金科玉条とする人たちにとっては、あまりにも雑駁で強引すぎるように見えるかもしれないが、秦もエグチもあくまで写真家としての原点から出発し、その可能性の幅をどれだけ伸ばせるかを模索しているのだろう。こういう「叫び」系の作品が出てくる要素が、実は若い写真家たちのなかにかなり色濃く共有されているのではないかとも思える。
2009/05/29(金)(飯沢耕太郎)