artscapeレビュー
山崎博「動く写真! 止まる映画!!」
2009年06月15日号
会期:2009/05/11~2009/06/05
ガーディアン・ガーデン/クリエーションギャラリーG8[東京都]
写真家とグラフィック・デザイナーを交互に取り上げている「タイムトンネルシリーズ」の28回目として開催された展覧会。この企画展示では、写真家の初期作品から近作までを、一度に見渡すことができるのがありがたい。今回の山崎博の展示でも、クリエーションギャラリーG8に展示してあった写真家としてスタートしたばかりの時期の「天井桟敷」の舞台写真や、寺山修司、土方巽、赤瀬川原平らのポートレートが興味深かった。彼がそういう被写体に比重を置いた写真の撮り方から、「カメラというメディアの特性そのものが写真である」という考えに至り、太陽や海や桜を「光学的事件」として撮影する方向へ踏み込んでいく過程が追体験できるように展示が構成されているのだ。
それにしても、山崎のほとんど孤高の営みといってよい仕事は、もっと高く評価されるべきではないだろうか。近作の「桜」の連作にしても、長時間露光、アウトドアでのフォトグラム、トイカメラのホルガでの多重撮影など、ありとあらゆる手段を駆使して写真の醍醐味を極めようとしている。僕は以前から、山崎は教育者として一流の資質を備えているのではないかと思っているのだが、若い世代にはぜひ彼の果敢な実験精神を学んでほしいと思う。そのためのテキストとして、リクルートから刊行された展覧会と同名の小冊子(山崎へのインタビューと年表で構成)が役に立つだろう。
「山崎、写真やるんなら世界を測れ」。寺山修司の言葉だという。写真とはたしかに「世界を測る」技術なのかもしれない。山崎の仕事を見ているとそう思えてくる。
2009/05/21(木)(飯沢耕太郎)