artscapeレビュー

内野清香「6つの部屋」

2009年06月15日号

会期:2009/05/09~2009/05/30

art & river bank[東京都]

1980年生まれ、2006年に東京綜合写真専門学校夜間部を卒業した内野清香の初個展。「他人の夢」を写真で辿り直し、再構築すると言う試みである。たとえばこんな夢。

──幼馴染みの友達に小学校で公開デッサンがあると連絡があって見に行く。会場に到着するとすでにデッサンが始まっていて、部屋は薄暗い。客は俺一人。モデルは机と椅子を重ねた上に座っている。画家がモデルの周りで考え事をしたかと思うと、ナイフを取り出した。いきなり「根拠を証明する」とか言って、モデルの左目からこめかみにかけてナイフで斬りつけた。モデルは前を向いたままじっとしている。モデルの周りを一周したところに、誰かが入ってきて「そいつの名前はピンクフロイドっていうんだよ」と言った。

こんな感じの6つの夢が、2~6枚程度の写真で再演されるとともに、テキストを読む声がCDから流れるようにセットされている。「他人の夢」を共有し、「誰のものともわからぬ物語」を生み出していくというアイディアは悪くない。もちろん、その再構築のプロセスがあまりうまくいっていないものもあるが、もう少し数を増やして(同時にレベルに達していないものを淘汰して)いけば、見応え、聴き応えのあるシリーズに成長していきそうだ。

2009/05/30(土)(飯沢耕太郎)

2009年06月15日号の
artscapeレビュー