2022年10月01日号
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artscapeレビュー

「日の丸」を視る目 石川真生 展

2009年07月01日号

会期:2009/05/23~2009/06/12

GALLERY MAKI[東京都]

石川真生の写真展。さまざまな人たちに日の丸を使って自己表現をしてもらう「日の丸を視る目」シリーズをおよそ10年ぶりに再開し、モノクロを中心とした旧作とカラーで撮影された新作をあわせて数十点発表した。被写体となったのは、右翼から左翼、運動家からノンポリ、在日からアイヌまで、有名無名、老若男女を問わず、文字どおり多種多様な人たち。たとえば歩道橋の上から眼下の「豚ども」をライフル銃で狙撃する構えを見せる見沢知廉など、写真としての完成度が高いものももちろんあるにせよ、このシリーズの醍醐味は石川による写真の質というより、むしろ被写体の人びとによる豊かな自己表現にある。左右を問わず、いずれの写真にも見受けられるのが、誰にとっても等しく該当するはずの「日の丸」という象徴にたいしてどのように自己を位置づけるのか、その態度を世間に表明する厳しさに耐える彼ら自身の強度である。それが、いわゆる「一般人」では到底なしえない類稀な特質であることはいうまでもないが、しかしそれを個人が引き受ける強さがなければ(逆にいえば個別の身体を欠いた抽象的なレベルだけでは)、日の丸をめぐる議論は何も生産しないことを石川は鋭く見抜いている。撮影者である石川と被写体である人びとが、ともに責任を負った写真は、だから安易なイデオロギー闘争の道具としてではなく、写真を見る者にとっての「日の丸」を問い返すメディアとして、「見る責任」をこちら側に突きつけてくるのだ。甘ったるいだけの自己表現に完結しがちな昨今の写真とは対照的な石川真生の写真こそ、まことの意味で社会に開かれている。まさしく、「日本の自画像」である。

2009/05/23(土)(福住廉)

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