artscapeレビュー
三喜徹雄『ネコノジカン』
2009年07月01日号
会期:2009/05/16~2009/05/31
湘南くじら館[神奈川県]
1967年の結成以来、関西を中心に活動している前衛美術集団「THE PLAY」。本展は、その主要メンバーのひとりである三喜徹雄による個展。ブリキやアルミの廃材をもとに動物のかたちに加工したオブジェや、海岸で集めた流木を組み合わせたオブジェの写真、「THE PLAY」のハプニングスで用いた木彫りのカヌーを輪切りにして作ったベンチなどを発表した。いずれの作品にも通底しているのは、目前の素材を別のかたちに作り変えるという単純明快な原則。廃材利用はもちろん、海岸のオブジェも巨大な流木を細い木々で支えながら持ち上げたもので、木彫りのカヌーにいたっては美術館で保存されるに値する「作品」をぶった切ってベンチにしてしまうありさまだ。「作品」に商業的ないしは歴史的な価値を付加するのが自明視されている昨今だからこそ、こうした原則をいまだに忠実に実践している美術家は今以上に評価されるべきではないだろうか。なぜなら、私たちの心を大きく揺さぶるのは、商品と見分けがつかないアートワークなどではなく、この原則をただひたすら追求することに没頭するアーティストの潔い姿勢にほかならないからだ。美術家にとってのエートス(心意気)をまざまざと見せつけられた気がした。
2009/05/29(金)(福住廉)