2022年10月01日号
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artscapeレビュー

山本太郎 展~ニッポン画物見遊山~

2009年07月01日号

会期:2009/05/22~2009/06/14

美術館「えき」KYOTO[京都府]

「ニッポン画」を提唱している山本太郎の本格的な回顧展。デビュー以来10年にわたって制作してきた作品を一挙に公開した。誰もが知るキャラクターを日本画の画面に導入することで諧謔や表象批判を狙っていた初期の作品から、キャラクターを排除した上で日常的な風景を端的に描いた近年の作品まで、山本の画風の変遷を一望することができる展示になっていた。一見すると日本画の伝統的な技法を駆使しながら、欧米と日本の文化が混在した日本の暮らしの風景を表面的に描いただけのように見られがちだが、今回はじめて山本の作品をまとめて見て気がついたのは、それらは日本の「雑種文化」を反映しているだけではなく、むしろその暗部をも描写しているのではないかということだ。たとえばマンガ的なキャラクターはたしかに表層的な記号を安易に取り込んでいるように見えるかもしれないが、しかし絵そのものをじっくり見てみると、それらは写実的に模写したとは思えないほど奇妙にデフォルメされ、マンガの身体表現ではありえないところに筋肉の線が入っていることに気づく。つまり、山本の「ニッポン画」とは、大衆文化の記号表現を貪欲に取り入れつつも、同時にその記号そのものの異質性を画面が破綻する限界ぎりぎりのところまで引き伸ばし、拡大し、膨張させ、極限化しているのだ。凡庸さを装いながら異常性を紛れ込ませる戦術といってもいい。これがアニメやマンガの図像を無邪気に引用するだけの凡百の現代アートとは明らかに異なる、山本独自の絵画的特質であることはまちがいない。こうした、ある意味で「悪意のある」批評的な絵画を涼しい顔をして制作してしまうところに、山本太郎の真骨頂がある。

2009/06/13(土)(福住廉)

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