2022年10月01日号
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artscapeレビュー

岸田劉生 肖像画をこえて

2009年07月01日号

会期:2009/04/25~2009/07/05

損保ジャパン東郷青児美術館[東京都]

没後80年を記念した岸田劉生の回顧展。自画像や肖像画、およそ80点を展示した。要点を簡潔におさえた解説文のおかげで、劉生のいう「内なる美」が、「装飾の美」「写実の美」「想像の美」という三段階を経ながら徐々に変化していく過程が、的確に理解できるようになっていた。後期印象派から北方ルネサンスの影響を受けた自画像は、外来の技法を取り入れることで近代的な自己意識を開発していった当時の日本人の精神構造を反映していたようだったが、それが関東大震災を契機に、今度は岩佐又兵衛や顔輝を参照しながら、いわゆる「デロリ」の美へと反転していく様子がおもしろい。狭い肩幅に大きな頭の肖像画はまるで「ガンケシ」のようで、それと大胆にデフォルメされた麗子像が劉生にとっての大きな到達点であることを考えると、劉生による近代的な自我の探究は、ついに日本的な「キャラ」に帰着したといえるように思う。

2009/06/20(土)(福住廉)

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