artscapeレビュー

青年団若手自主企画 vol.42『昏睡』(作:永山智行、演出:神里雄大)

2009年09月01日号

会期:2009/08/17~2009/08/26

アトリエ春風舎[東京都]

『三月の5日間』を上演し、また今年の春に行なわれた「キレなかった14才♥りたーんず」でも注目された神里雄大は、岡崎藝術座を主宰する話題の若手演出家だ。彼が気になって見に行ったのだけれど、本作を書いた永山智行や、役者の山内健司と兵藤公美の力にも魅了された。男女の短い物語が連なる。欲望の限りを尽くして欲望が満たせなくなった王、7時間50分きっかり寝るのが健康と信じ込んだ男、不倫相手との性交中に抜けなくなった男の話などが、けっして合一化できない女との関係とともに描かれる。最後に2人は、真っ暗闇で死後になくなった肉体を求める。恋人であれ夫婦であれ他人は他人であるということがクリアにまた寓意的な仕方で語られ、観客は苦い笑みを浮かべる。自分が把握できる範囲を超えて他人は存在している。その事実に向き合って、それでも関係を推し進めていきたいと願う前向きさを感じる上演だった。

2009/08/22(土)(木村覚)

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