artscapeレビュー
鴻池朋子 展 インタートラベラー 神話と遊ぶ人
2009年09月01日号
会期:2009/07/18~2009/09/27
東京オペラシティアートギャラリー[東京都]
鴻池朋子の大規模な展覧会。これまでの創作活動を振り返る回顧展というより、過去に発表してきた作品と新作を掛け合わせて新たな物語を紡ぎ出した。それは地球の中心に向かって降り立ってゆく地底探検の神話。会場の入り口を地表面として、「地殻」や「外部マントル」などと名づけられた展示室を進むにつれて徐々に深度を深め、最終的にマイナス6,377kmの「地球の中心」に到達するという仕掛けだ。鴻池のファンタジックな作品は、ともすると私的な心象風景の現われとして理解されがちだったが、ここでは「心底探検」という小さな物語が「地底探検」という大きな物語に組み込まれているため、観客はおのずと自分の心の内側と身体の外側に同時に想像力を発揮しながら世界の根源に思いを馳せることになる。個々の作品とそれらを包括する文脈が有機的に結びつき、見終わったあと心地よい疲労感を味わえるほど、すばらしい展覧会である。
2009/07/22(水)(福住廉)
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