artscapeレビュー
ゴーギャン展
2009年09月01日号
会期:2009/07/03~2009/09/23
東京国立近代美術館[東京都]
ポール・ゴーギャンの展覧会。油彩をはじめ版画や彫刻など、およそ50点が展示されたが、なかでも注目されたのが、本邦初公開となる《我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか》(1897-1898)。ワイド画面にタヒチの風景と図像を描いた絵はたしかに見応えがあったけれど、気になったのはその脇に絵を図解する解説ボードが設置されていたこと。図像学よろしく、さまざまなイメージを懇切丁寧に解説することを、専門家による親切なサービスととらえるか、あるいは大きなお世話ととるべきかは客の自由だが、こうした善意の取り計らいが期せずして日本人の「定説文化」(針生一郎)を再生産しているように思えてならない。定説を拝聴して、確認して、納得して、安心して帰っていくプロセスからいかにして脱却することができるのか。近代をいまだに内面化しえないまま、いびつなポストモダン社会を生きる私たちにとっての課題は、そこにある。おそらくそのヒントは、ごくごくありていにいってしまえば、学芸の研究と鑑賞教育を有機的に統合した展覧会のありようにこそ、求められるのではないだろうか。
2009/07/29(水)(福住廉)