artscapeレビュー

イデビアン・クルー『挑発スタア』

2009年09月01日号

会期:2009/08/20~2009/08/25

にしすがも創造舎[東京都]

ファッションショーのランウェイに似た長机が椅子と一緒にどん、とある。両側から観客が挟む。ダンサーが登場すると、モデルみたいに背筋を張って歩く。ただそれだけなのにダンスが体から溢れている。10人ほどのダンサー各人が各様の衣装をまとう。孤独で凜としている。井手茂太は、そんな個人を踊らせる。けれど、踊りのきっかけはたいてい他人で、のせられたり脅かされたり、気づけば踊り手は我を忘れ踊り、ポーズを決めている。きっかけは他人とは限らず、普段は隠れている、抑圧された状態の自分が踊りをうながす場合もある。たがを外すと、そこに「いつもとは違うテンションの自分」が現われ、そこに踊りが発生する。そうして熱風のようにダンスはダンサーの体に迫り、通り抜け、体を熱し、消えてゆく。踊らされた自分に気づき、不意に恥ずかしさがこみ上げるなんてことも隠さない。そう、なぜ踊るのか踊ってしまうのかという因果性が明確なのだ。そのことが井手の舞台を誠実なものにしている。イデビアン・クルーとしての活動はしばらく休止するそうだけれど、その間も、井手がメンバーたちとともに手中にしているダンスの因果性がどこでどう展開するのか、忘れず見守っていきたい。

2009/08/23(日)(木村覚)

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