artscapeレビュー
画家の眼差し、レンズの眼 近代日本の写真と絵画
2009年09月01日号
会期:2009/06/27~2009/08/23
神奈川県立近代美術館/葉山館[神奈川県]
19世紀以来の絵画と写真の関係を歴史的に検証する展覧会。絵画は写真の迫真性を貪欲に取り込んできたが、写真も絵画的な写真「ピクトリアリズム」に取り組んできた。その相互関係を、写真100点のほか、油彩画や日本画、版画、水彩、素描など合計215点によって明らかにした。興味深かったのは、絵画の「元ネタ」となった写真をあわせて展示していたこと。たとえば高橋由一の《山形市街図》(1881~1882)は、それと並置された写真を見ると、写実的な再現性にもとづきながらも、随所で由一の構成力が発揮されているのが一目瞭然でおもしろい。元の写真には見られなかった人影が、由一の油絵では通りに描き加えられ、遠景には煙突から立ち昇る煙まで描かれている。セピア色の写真では空の色合いは推し量るほかないが、由一は薄雲を効果的に導入することによって、いかにも物語的な大空をつくりあげている。作家の独創的な「眼差し」が、かなりの部分で「レンズの眼」に依存していることを実証する、画期的な展覧会である。
2009/07/28(火)(福住廉)