artscapeレビュー

まいにち、アート

2009年09月01日号

会期:2009/07/18~2009/09/06

群馬県立近代美術館[群馬県]

群馬県立近代美術館が毎夏主催している「こども+おとな+夏の美術館」。今回は、淺井裕介、安部泰輔、泉太郎、KOSUGE 1+16が参加し、いずれも家族向けの展覧会という枠組みには到底収まりきらない、そして美術館の広大な空間に負けず劣らず、すばらしい作品を発表した。KOSUGE1+16は地元の小学生たちの自画像を周囲の壁に貼りつけて観客席を彩ることで、例の巨大なサッカーボードゲームを《AC-GM5(アスレチッククラブ群馬の森5室)》としてバージョンアップさせ、安部は同館所蔵の絵画作品の目前で、それらを古着で再現した作品を床に置いた。泉は、おそらくこれまででもっとも大きな空間を作りこんだ映像インスタレーションを発表。新作の《貝コロ》は、正直に言って「やっつけ感」が否めないが、それを差し引いたとしても、モニターを有機的に立ち並べ、天井まで最大限に使う手並みは鮮やかだ。そして、4人(組)のなかでも群を抜いていたのが淺井裕介。同館の中でもっとも高く広いと思われる壁面を目一杯使った巨大な泥絵のほか、紙ナプキンから封筒、ティッシュの箱などに描きつけた《日々のドローイング》、同館周辺で拾い集めた木々や岩を並べた《置絵》など、見る者を飽きさせない絵を存分に披露した。大自然と動物に囲まれながら生命の誕生を予感させる巨大な泥絵《大きな山》は、おそらく淺井のこれまでの制作活動にとって大きな達成となるにちがいない。次のステージでの活躍が楽しみだ。

2009/07/26(日)(福住廉)

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