artscapeレビュー
北野謙 個展『one day』
2009年09月01日号
会期:2009/07/11~2009/08/08
MEM[大阪府]
さまざまな人の顔を重ね焼きした《our face》で知られる北野謙だが、今回出品されたのはランドスケープに挑戦した《one day》のシリーズ。ある場所の一日を、原則として日の出から日の入りまで長時間露光して撮影した写真作品だ。富士山を撮った作品では太陽の軌道が光の帯となって山肌にかかり、都市を撮った作品では動き回る人間の姿が消えてしまうため気配だけが残ったシュールな光景が浮かび上がる。時間を切り取るのではなく、積層させるとで神秘的な空間を作り出すのが面白い。いや、見つけたというべきか。時間というものの不思議さをスチール写真で表現した希有な例である。
2009/07/30(木)(小吹隆文)