artscapeレビュー

ファッション奇譚──服飾に属する危険な小選集

2010年07月01日号

会期:2010/04/15~2010/06/27

神戸ファッション美術館[兵庫県]

ファッションの本質をオリジナルとコピーの問題に求めた画期的な展覧会。「フセイン・チャラヤン」展にしろ、「ラグジュアリー」展にしろ、ファッションの展覧会といえば、デザイナーによるオリジナルの「作品」に焦点を当てるばかりで、コピーの問題を考えることはほとんどないが、現在のファッションの現況を振り返ってみれば、それが決して無視できる問題ではないことは明らかだ。ハイファッションによる人気のデザインはたちまち模倣され、他のブランドによって格安で提供されることによって大衆が消費するというシステムが社会に定着しているからだ。美術家・岡本光博はこうした社会の現実を反映させた作品としてブランドバッグの生地を使ったように見える《バッタもん》というバッタの立体作品を発表したが、ルイ・ヴィトンからのクレームで展示から外されてしまうという事件が発生した。わざわざ公立美術館の展覧会に介入してくるほど、ラグジュアリーブランドにとってオリジナルとコピーの問題はことほどかように深刻な事態なのだろう。けれども、そのように踏み込んでくることによって、ファッションの今日的な問題を検証しようとした展覧会が踏みにじられたということは事実であり、じっさい《バッタもん》を見ることはできなかった。
ルイ・ヴィトンがいったいどのような考えで、こうした検閲行為に
踏み込んでいるのか、理解に苦しむ。

2010/06/06(日)(福住廉)

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