2021年12月01日号
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artscapeレビュー

酒井幸菜『難聴のパール』

2010年07月01日号

会期:2010/06/18~2010/06/20

ヨコハマ創造都市センター[神奈川県]

見終わった直後、この既視感をどうとらえようかと思った。はっきり「参照しています」と表明する身振りが含まれていないものの、ゴダール?タルコフスキー?などとある種の映画たちのシーンを想起せずにはいられない場面が脈絡なく(少なくとも観客にはその流れの必然性は読みとれない)続いてゆく。個々のイメージのみならず振付や音楽の用い方なども個性は希薄で、「きれいだな」「雰囲気がいいな」と思わされた数々の瞬間は(ダンサーたちのルックスにもいえることなのだけれど)どこかで見たような「らしさ」に満ちている。この「らしさ」は批評的で戦略的なものなのか、ただたんに作家がある種のアートへの憧憬に突き動かされた結果なのか。恐らく後者だろう。だとすれば、アートに憧れる若いダンス作家の熱情がかなりベタな状態で舞台化されているのが本公演ということになろう、そうなると、その熱情に共鳴できるか否か、あるいはそうした熱情を抱く作家に愛着を抱けるか否かに、観客の評価はかかってくることだろう。さらに、だとしたら気になるのは、そうした評価のされ方を作家が望んでいるのかどうかで、つまるところ、作家は舞台を通して観客とのあいだになにを引き起こしたいと思っているのか、その問いが見ながらずっと心に離れなかった。

2010/06/19(土)(木村覚)

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