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書籍・Webサイトに関するレビュー/プレビュー

カタログ&ブックス | 2021年5月15日号[近刊編]

展覧会カタログ、アートやデザインにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
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ボイス+パレルモ

編集:豊田市美術館、埼玉県立近代美術館、国立国際美術館
デザイン:刈谷悠三+角田奈央(neucitora)
発行:マイブックサービス
発行日:2021年3月
サイズ:200×297mm、368ページ

「ボイス+パレルモ」展(豊田市美術館、埼玉県立近代美術館、国立国際美術館 2021-22年)の公式カタログ。
1960年代のデュッセルドルフ芸術アカデミーで教師と教え子の関係にあったボイスとパレルモ。芸術概念を拡張し、積極的に社会へ働きかけたボイスと、抽象的で静謐な作品を作り続けたパレルモの個性は一見対照的でありながら、芸術を生の営みへと取り戻そうと試みた点では共通していた。──1960-70年代の両者の代表的な作品と本展企画者やドイツの研究者による書き下ろしのボイス論、パレルモ論、各論を軸に、アクションあるいは制作中の様子を捉えた多数のドキュメント写真や、ボイスがパレルモについて直接語ったテキストの全文翻訳など、貴重なアーカイブ資料を織り込んで重層的に構成した一冊。ボイスの「作品」と造形理論にあらためて光を当てるとともに、パレルモの活動を日本で初めて包括的に検証する。

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ボイス+パレルモ:オススメ展覧会(2021年05月01日号)

マーク・マンダースの不在

著者:マーク・マンダース
デザイン:須山悠里
撮影:今井智己
テキスト:松井みどり、ダグラス・フォーグル、鎮西芳美
翻訳:木下哲夫他
発行:HeHe
発行日:2021年5月25日
サイズ:255×180mm、216ページ

彫刻や言葉、オブジェを用いたインスタレーションによって国際的に評価を集める美術家、マーク・マンダース。国内美術館ではじめてとなる東京都現代美術館での個展開催にあわせ、待望の日本初作品集発売!
個展のカタログを兼ねた本書は、本邦初公開となるヴェネツィア・ビエンナーレに出品された作品や、重要な個展では必ず出品されてきた代表作を含む1000㎡に及ぶインスタレーション・ビューを今井智己が撮影。次章では、展覧会未出品20点を含む、計26点の作品について、マンダース本人によるテキストと図版で解説。その他作家のテキスト「マーク・マンダースの不在」「ドローイングのこと」や、スタジオ写真も収録した、作家マンダースを読み解く、貴重なモノグラフです。

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マーク・マンダース —マーク・マンダースの不在:オススメ展覧会(2021年05月01日号)

宇佐美圭司 よみがえる画家

編著:加治屋健司
発行:東京大学出版会
発行日:2021年4月10日
サイズ:B5判変形、176ページ

2021年4月から開催される東京大学教養学部駒場博物館「宇佐美圭司 よみがえる画家」展のカタログ。東京大学中央食堂に掛けられていた《きずな》が不用意な廃棄処分で失われたことの反省とともに、傑出した画家として活躍するだけでなく旺盛な評論活動でも知られた宇佐美の仕事を広い視野から捉え直す。出品作品に加えて、代表的な作品の図版、彼自身の文章や詳細な文献目録なども収録し、今後の現代美術研究にも有益な一書。

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「宇佐美圭司 よみがえる画家」展:アートフラッシュニュース(2021年03月26日)

《黄金の林檎》の樹の下で アートが変えるこれからの教育

著者:田窪恭治、高階秀爾、聖心女子大学
編著:水島尚喜、永田佳之
発行:三元社
発行日:2021年4月5日
サイズ:21×21cm、85ページ

「人間として在る」ための学びと、アートはいかにかかわるのか──。アートと出会った瞬間に「あっ、すごい! 」と直感し、他者や世界と融和する子どもたちの「共生的感性」や、「生命」のつながりに美を見る「自然との共生」の思想から、そのすがたを探る。「共生」「持続可能性」「多様性」の象徴として東京・広尾の聖心女子大学に誕生した田窪恭治のモザイク壁画《黄金の林檎》をめぐってくり広げられた、現代社会におけるアート、そして教育論。2017年の完成記念シンポジウム、待望の書籍化。

惑星都市理論

編者:平田周、仙波希望
発行:以文社
発行日:2021年4月21日
サイズ:上製カバー装、456ページ

コロナウイルス感染症の世界的な流行で、人々の移動が大幅に制限されるなかにおいても、まるで何も起きていないかのように駆動し続ける「世界経済」。それはすでに「惑星都市」が存在していることの証でもある。本書は、「惑星都市理論」(=プラネタリー・アーバニゼーション研究)という近年世界的に注目されている分析枠組みを用いて、「インフラ」「ロジスティクス」「リスケーリング」といった「惑星都市」を成り立たせる諸要素を考察しながら、「ポストコロニアル都市理論」「関係論的転回」「都市への権利」「自然の生産」など、欧米の都市理論を賑わせている対抗的ロジックの可能性と限界を見定め、その先を模索しようと試みる。「惑星都市」を私たちのものにするために。

虚像培養芸術論 アートとテレビジョンの想像力

著者:松井茂
発行:フィルムアート社
発行日:2021年3月24日
サイズ:四六判、上製、312ページ

1960年代、テレビジョンの想像力=「虚像」がアートを起動した。 磯崎新は都市デザインを虚業と称し、横尾忠則は虚像となり、高松次郎は影を演じた。今野勉はテレビの日常性を主張し、東野芳明は「テレビ環境論」を書いた。 マスメディアの想像力を分母に、現代を逆照射する戦後日本芸術論。

ディズニーと動物─王国の魔法をとく

著者:清水知子
発行:筑摩書房
発行日:2021年2月15日
サイズ:四六判、336ページ

ウォルト・ディズニーが創造したエンタテインメントは、米国大衆文化の代名詞であり、世界中を席巻している。姫と動物たちが織りなす夢と魔法の世界はいまなお拡大を続けるいっぽう、巨大資本を投入した反自然的な世界、徹底的に飼いならされた無菌化された世界でもある。ディズニーの物語は、現代の政治、社会、文化、自然に何をもたらしたか。その映像は私たちにどのような影響を及ぼしてきたか。その世界の舞台裏を探る。

言葉と衣服

著者:蘆田裕史
発行:アダチプレス
発行日: 2021年2月22日
サイズ:四六判変型、182ページ

私たちは生まれてからずっと、衣服とともに生活している。それなのに、衣服を語る言葉が貧しいのはなぜだろう。あいまいな用語が流通するファッションの世界に向き合い、本書は「言葉の定義=批評のためのインフラ整備」を試みる。ファッションをめぐる新たな思考が、この本からはじまる。

ここにあるしあわせ

著者:近藤亜樹
発行:T&M Projects + ShugoArts
発行日:2021年3月
サイズ:220×280mm、128ページ

2019年冬から2020年春にかけて、近藤亜樹が故郷・札幌にて描いた50点の作品群「ここにあるしあわせ」。

疾駆ZINE "YOUTH"

執筆者:ナタリー・ホーバーグ、石川嵩紘、加藤磨珠枝、上村洋一、菊竹寛、小林エリカ、鈴木俊晴、谷口正造、椿玲子、奈良美智、萩原俊矢、濱田智子、ミヤギフトシ、滝口悠生、蔵屋美香
グラフィック・デザイン:田中義久
発行:YKG publishing / Yutaka Kikutake Gallery Books
発行日:2021年4月10日
サイズ:B5判、40ページ

「Youth(仮)」展のオリジナルZINE 奈良美智さん初の短編小説や出展作家たちの物語、エッセイに加えて、様々な著者たちのYouthにまつわるエピソードを纏めました。





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2021/05/14(金)(artscape編集部)

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小松左京『復活の日』

発行:KADOKAWA
発行日:1975/10/30

新型コロナウイルスが流行し始めた昨年、『ペスト』とともに再注目を集めた小説が『復活の日』である。御多分に洩れず、私も両作品とも夢中になって読んだ。『ペスト』はフランス領アルジェリアを舞台に疫病に惑わされる庶民の言動を坦々と描いた不条理小説であるが、『復活の日』は同じ疫病を扱いつつもスケールがまったく違った。世界的パンデミックがいまだ収まらず、変異種が次々と生まれている昨今、同作品に改めて注目してみたい。

『復活の日』はSFの名手、小松左京によって書かれた小説だ。1964年に発表されたとは思えないほど斬新で、来たる未来を予知していたかのような内容には慄くばかりである。第一部では1960年代のある年に “チベットかぜ”と呼ばれるインフルエンザが世界中で猛威を奮う様子が描かれる。その年の3月に最初の兆候が現われてからわずか半年間でパンデミックとなり、人類が滅亡に向かうのだ。5月の東京では、朝のラッシュ時、いつもなら満員になる電車が空いている。誰かが激しい咳をすれば、人々は薄気味悪そうに、横を向いて身を引く。そんな描写が昨春のコロナ禍と被り、読みながら身を震わせてしまった。一方、病院の中は戦争同然だったという描写も、現在の逼迫した医療現場と酷似している。

そうした世の中の様子と並行して描かれるのが、米英の国家軍事機密だ。それぞれが断片的な場面として描かれているが、それらをつなぎ合わせていくと、おそらく米国の人工衛星が宇宙から採取してきた微生物をもとに、同国の国防総省である原種がつくられ、それが盗まれて英国へと渡り、同国陸軍省の研究所で恐ろしい“核酸兵器”に変異させられたという経緯が見えてくる。そして強烈な毒性を持った変異種が何者かによって研究所から奪われ、彼らのうかつな飛行機事故によってアルプス山中にばら撒かれてしまうのが事の発端となる。新型コロナウイルスが中国の武漢ウイルス研究所から漏れたものではないかという噂が昨年に立ち、未だに消えないが、同書を読むと、そんな噂もあながち嘘ではないかもしれないという気さえしてくる。

しかし人類は完全に滅亡しなかった。南極に滞在する世界各国隊が生き残ったのである。まるでノアの箱舟のように……。そこで彼らが築く新たな共同体によって人類は“復活”に向かい、そして彼ら自身も想定外だったある出来事によって病原体で覆われた地球が“復活”する。その壮大な結末のすごさをぜひ味わってほしい。


関連レビュー

アルベール・カミュ『ペスト』|杉江あこ:artscapeレビュー(2020年05月15日号)

2021/05/10(月)(杉江あこ)

Ryu Ika『The Second Seeing』

発行所:赤々舎

発行日:2021/04/01

パワフルの一言に尽きる。『The Second Seeing』は、中国・内モンゴル自治区の出身で、武蔵野美術大学、パリ国立高等美術学校などで学んだRyu Ikaの、私家版ではない最初の写真集である。収録されているのは、第21回写真「1_WALL」展のグランプリ受賞者個展としてガーディアン・ガーデンで開催された、同名の展覧会の出品作。展示では、出力したプリントを壁一面に貼りめぐらせたり、くしゃくしゃに丸めて床に積み上げたりして、目覚ましいインスタレーションを実現していたのだが、今回の写真集ヴァージョンでも、出力紙を折りたたんだ状態で印刷するなど、印刷やレイアウトに工夫を凝らして視覚的スペクタクルの強度をさらに上げている。内モンゴル自治区、エジプト、日本、フランスで撮影された写真群が入り混じり、衝突しあって、異様にテンションの高い映像の世界が出現してきているのだ。ギラつくような原色、神経を苛立たせるノイズ、物質感を強調することで、真似のできない独特の表現のあり方が、形をとりつつある。

状況を演出し、撮影した写真にも手を加えることが多いにもかかわらず、Ryu Ikaの写真は現実の世界から離脱しているのではなく、むしろ地に足をつけた重力を感じさせる。それは、写真のなかに「我」を埋め込みたいという強い思いが貫かれているからだろう。ガーディアン・ガーデンでの展示に寄せたテキスト(本書にも再録)に「ただ撮った/見た風景を紙に再現したと思われるのが気が済まないというか、その現実からデータ、データから現実のプロセスの中に『我』がいることを、我々作り手としては、それを無視したくない、無視されたくないと世の中に伝えたい」と書いている。若い世代の写真家たちの仕事を見ると、画像を改変することで、「我」=「私」の痕跡を消去してしまうことが多いように感じる。そんななかで、Ryu Ikaの「我」に固執する姿勢は際立っている。そのことが彼女の写真に、絵空事ではないリアリティを与えているのではないだろうか。

2021/05/04(火)(飯沢耕太郎)

カタログ&ブックス | 2021年4月15日号[近刊編]

展覧会カタログ、アートやデザインにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
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アヴァンギャルドのオリジナリティ モダニズムの神話

著者:ロザリンド・E・クラウス
翻訳:谷川渥・小西信之
発行:月曜社
発行日:2021年3月3日
サイズ:四六判上製、480ページ

20世紀美術批評の最重要論集。モダニズム芸術の中核概念である「特異性」「オリジナル」「唯一性」「原作者」「自発性」などを神話として分析し、それらによって覆い隠されている「反復」「コピー」「差異」「パスティッシュ」「展示空間」といった現実を顕わにする論争の書。美術をめぐる言説に、時代を超えて刺激を与え続けている現代の古典、改訳にてついに再刊。(原著1985年刊。『オリジナリティと反復』リブロポート、1994年刊を全面的に改訳した新版)

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『オリジナリティと反復』ロザリンド・E・クラウス|沢山遼:Artwords(アートワード)

ポスト・アートセオリーズ─現代芸術の語り方

著者:北野圭介
発行:人文書院
発行日:2021年3月30日
サイズ:13.2×18.8cm、280ページ

拡散する現代アートに対峙する理論とは何か。芸術の終焉、ポストモダニズム、ポストセオリーの時代を越えて、来るべき理論を探る野心作。
1980年代、アーサー・ダントーは「芸術の終焉」を唱えた。しかし、その後、現代アートはグローバル資本主義の拡大に同伴するかのように爆発的な隆盛を見せる。一方、芸術に向き合ってきた人文学はポストモダニズムの席巻の後、社会主義の崩壊、メディア技術の発展やアート自体の拡散も相俟って、理論的なものが後退してゆく。果たしていまや、この事態に斬り込む言葉はあるのか。本書では、「理論」を牽引するジャーナル『オクトーバー』『クリティカル・インクワイアリー』の変遷を軸に、現代思想とアートの複雑な絡み合いを読み解く。米国を越えて加速する世界規模の知のサーキュレーションを背景に、かつての理論的地平の乗り越えを試みる。

なお本書には、黒いコードの群れ──「クリスチャン・ボルタンスキー─Lifetime」展|北野圭介:フォーカス(2019年04月15日号)も収録。


千葉正也個展

著者:千葉正也
発行:美術出版社
発行日:2021年3月16日
サイズ:30cm、180ページ

2021年1月より東京オペラシティ アートギャラリーにて開催されていた「千葉正也個展」図録。本展インスタレーションを撮り下ろし掲載するほか、過去の代表作から最新作まで掲載した作家初の作品集。


[収録テキスト]
・インタビュー:聞き手=松井みどり (美術評論家)
・寄稿:羽鳥嘉郎(演出家)、首藤直樹(アーティスト)
・論文:堀元彰(東京オペラシティ アートギャラリー)

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視覚言語と生成する身体──『夢の男』と千葉正也個展から|田中みゆき:キュレーターズノート(2021年04月01日号)

絵画を通してのみひらかれるもの──千葉正也個展/輝板膜タペータム 落合多武展|能勢陽子:キュレーターズノート(2021年03月01日号)

千葉正也個展 |村田真:artscapeレビュー(2021年02月01日号 )

リフレクティヴ・ノート(選集)

著者:田中功起
発行:美術出版社
発行日:2021年3月10日
サイズ:21cm、459ページ

アーティストの抽象的思考と具体的実践は、コロナ禍で変わったのか。日本を代表する美術家、田中功起の新刊。2020年10〜12月にアート・ソンジェ・センター(韓国、ソウル)で開催された個展「Vulnerable Histories (A Road Movie)」にあわせて刊行。コロナ禍のインタビューや書き下ろしを含めた、近年国内外で寄せた16のテキストを収録。日英韓の3か国語表記。

なぜ戦争をえがくのか─戦争を知らない表現者たちの歴史実践

編著:大川史織
著者:小泉明郎、諏訪敦、武田一義、高村亮、遠藤薫、寺尾紗穂、土門蘭、柳下恭平、後藤悠樹、小田原のどか、畑澤聖悟、庭田杏珠、渡邉英徳
みずき書林
発行日:2021年1月9日
サイズ:13.2×18.8cm、320ページ

美術、絵画、漫画、工芸、音楽、小説、写真、彫刻、演劇、研究……歴史と記憶と表現をめぐる10の対話。
敗戦から75年が経過し、当時を知る人の数は年々少なくなりつつある。体験者の記憶を継承することは急務のひとつである。しかし、〈戦争記憶の継承〉とはどういうことなのか。表現者たちはどのように戦争と出会ったのか。私たちは知らないことをどのように語り継ぐのか。体験のない人びとによる、体験のない人たちのための、〈記憶の継承〉のかたち。

光のない。 [三部作]

著者:エルフリーデ・イェリネク
翻訳:林立騎
発行:白水社
発行日:2021年3月11日
サイズ:18cm、189ページ

ノーベル文学賞作家イェリネクが、ポスト3.11の世界に捧げるレクイエム!東日本大震災と原発事故がモチーフの三部作、一挙収録[訳文一新]。既刊単行本の『光のない。』に収録された四作から「雲。家。」と「レヒニッツ(皆殺しの天使)」を割愛し、「光のない。」「エピローグ?」に「プロローグ?」を新しく追加して、Uブックス版としての刊行。日本の読者のために、自作解説「よそものとしてわたしたちはやってきて、誰もが一人のままでいる。(わたしの作品『光のない。』についてのいくつかの考え)」も特別寄稿されたワールドプレミア・エディション。

未来のアートと倫理のために

編著:山田創平
執筆者:今井朋、樅山智子、あかたちかこ、小泉明郎、内山幸子、吉澤弥生 、竹田恵子、飯田和敏、鷹野隆大、緒方江美、ウー・マーリー、住友文彦、猿ヶ澤かなえ、三輪晃義、遠藤水城、百瀬文
発行:左右社
発行日:2021年3月9日
サイズ:四六判変型、260ページ

「アートにおける倫理」をテーマにした必携の入門書
アート界のジェンダー不平等 見えなくされる芸術労働者 マイノリティと表現の自由 美術館のアイデンティティ 公平性とアートマネジメント 制作と合意 芸術実践における倫理のあり方と公平な社会の可能性を、アーティスト、アートマネージャー、キュレーター、ソーシャルワーカー、ドラァグクイーン、社会学者、弁護士らが共に探った、これからのアートを考える人に必携の一冊。

日本近現代建築の歴史 明治維新から現代まで (講談社選書メチエ)

著者:日埜直彦
発行:講談社
発行日:2021年3月11日
サイズ:13×18.8cm、424ページ

本書は、明治維新から現在に至る日本の建築史を一筆書きで描き出す試みである。日本の建築史については、これまで幾多の著作が書かれてきたが、1970年までで終わるものがほとんどで、その後の時代を包含するものはない。バブル経済に沸き立った1980年代を経て、長い不景気の時代を迎えた日本は大きな変化を受けている。ならば、21世紀の今、本当に必要なのは、この150年の歴史を通覧することにほかならない。


クリティカル・ワード メディア論 理論と歴史から〈いま〉が学べる

編著:門林岳史、増田展大
執筆者:秋吉康晴、飯田麻結、飯田豊、岩城覚久、遠藤英樹、大久保遼、喜多千草、佐藤守弘、清水知子、鈴木恒平、竹峰義和、田中洋美、橋本一径、浜野志保、原島大輔、福田貴成、堀潤之、前川修、馬定延、松谷容作、水嶋一憲、水野勝仁、光岡寿郎、毛利嘉孝、山本泰三、吉田寛
発行:フィルムアート社
発行日:2021年2月26日
サイズ:四六判、296ページ

メディアの織りなす世界を読み解く35のキーワード
ゲーム、ソフトウェア、モバイルから、資本、ジェンダー、観光、軍事まで……現在/過去の文化と社会を一望できる、メディア論の新しい教科書!


TCP Record&Review─Vol.1 バウハウスへの眼差し─EXPERIMENTS─

発行人:伊奈英次
編集・デザイン:岡田奈緒子、小林功二(LampLighters Label)
発行:東京綜合写真専門学校
発行日:2021年3月31日
サイズ:25.6×18.4㎝、130ページ

2019年に東京綜合写真専門学校ギャラリー(1F+4Fギャラリー)にて開催された展覧会「バウハウスへの眼差しーEXPERIMENTSー」の記録集。展⽰は主催者である東京綜合写真専⾨学校の校⻑・伊奈英次によるバウハウスの記録写真展「バウハウスを訪ねて」と、東京綜合写真専⾨学校を卒業した写真家 7名による新たな挑戦の場「7 EXPERIMENTS」の 2部で構成。


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東京綜合写真専門学校「バウハウスへの眼差しーEXPERIMENTSー」関連イベント:アートフラッシュニュース(2019年11月01日)

中﨑透 Connection Collection(記録集)

著者・編集:中﨑透
執筆:石川卓磨、佐藤慎也、天野一夫
写真:松本美枝子、舘かほる、中﨑透、仲田絵美
発行:中﨑透
発行日:2020年10月31日
サイズ:21cm、130ページ

2020年10月〜11月にかけて水戸のキワマリ荘/中﨑透美術館準備室(仮)で開催された展覧会「Connection Collection」の記録集。


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新型コロナ禍での行政による文化芸術支援 これまでとこれから(後編)|内田伸一:トピックス(2021年02月01日号)

TERATOTERA 2010→2020 ボランティアが創ったアートプロジェクト

監修・ディレクター:小川希
編集:西岡一正
デザイン:トール至美
翻訳:ライアン・ホームバーグ
発行:アーツカウンシル東京
発行日:2021年3月11日
サイズ:13x18.8cm、424ページ

TERATOTERA(テラトテラ)は、東京都とアーツカウンシル東京と、吉祥寺に拠点を置いて現在進行形の芸術をフィーチャーしている一般社団法人Ongoingが協働して、平成21年度よりJR中央線高円寺駅~吉祥寺〜国分寺駅区間をメインとした東京・杉並及び武蔵野、多摩地域を舞台に展開する、地域密着型アートプロジェクトおよびその発信機関の総称。本書は、アートプロジェクトTERATOTERAの2010から2020の営みをまとめたドキュメントブック。


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オルタナティヴ・アートスクール ──第4回 自分たちに必要なプロジェクトをつくる アートプロジェクトの0123|白坂由里:トピックス(2019年04月15日号 )



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2021/04/14(水)(artscape編集部)

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岸幸太『傷、見た目』

発行所:写真公園林

発行日:2021/03/01

2004年にphotographers’ galleryのメンバーに加わった岸幸太は、2006-2009年に大阪・釜ヶ崎、東京・山谷、横浜・寿町などの路上で日雇い労働者たちをスナップ撮影した「傷、見た目」と題する写真シリーズを、同ギャラリーと、隣接するKULA PHOTO GALLERYで連続的に発表した。それらは、1950-1960年代に井上青龍が釜ヶ崎を撮影して以来の伝統的なテーマを受け継ぐものといえる。だが、岸はあえて労働者たちとコミュニケーションをとることなく、ノーファインダーでシャッターを切り続け、客観的、即物的なドキュメントに徹している。とはいえ、岸の写真には彼らの所有物を暴力的に奪いとるような視線のあり方はあまり感じられない。路上に打ち棄てられたモノたちをクローズアップで撮影した写真群も含めて、「傷、見た目」は、下積みの人たちにのしかかる社会的なプレッシャーがじわじわと滲み出てくる、希有な味わいのドキュメントとなった。

岸はその後、新聞紙に写真を印刷した「The Book with Smells」(KULA PHOTO GALLERY、2011)、廃材、床材、プラスチック製品などに直接プリントを貼り付けた「Barracks」(photographers’ gallery/KULA PHOTO GALLERY、2012)など、写真を素材としたインスタレーション的な展示も模索していった。物質性の強い被写体をさらに強烈な物質性を備えた支持体と強引に接続するというそれらの興味深い試みを経て、2020年12月と2021年2月〜3月、会期を2回に分けて、ひさしぶりにphotographers’ galleryで個展「傷、見た目」を開催した。ふたたびストレートなスナップ/ドキュメンタリー写真に回帰した同展に合わせて刊行されたのが、15年余りの成果をまとめた本書である。大判ハードカバーの写真集に収録された204点の黒白写真には、ここにある眺めを、このような形で残しておきたいという強い意志が刻みつけられている。

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居心地、居場所、排除と公共空間──尾花賢一《上野山コスモロジー》と岸幸太写真展「傷、見た目」から|町村悠香(町田市立国際版画美術館):artscapeキュレーターズノート(2021年04月01日号)

2021/04/11(日)(飯沢耕太郎)