artscapeレビュー
2017年07月15日号のレビュー/プレビュー
名所絵から風景画へ─情景との対話(後期)
会期:2017/05/27~2017/06/25
三の丸尚蔵館[東京都]
久々に三の丸尚蔵館へ。大手町から皇居東御苑に入ると外国人が多くなる。皇居だから西洋人ばかりだと思ったら、中国人や韓国人も意外と多かった(言葉やファッションでわかる)。まあ日本に来るくらいだから反日は少ないだろうけどね。で、三の丸尚蔵館。昭和天皇の崩御後、国に寄贈された御物の保存・研究を目的に建てられたもので、当初は一般公開するつもりがなかったらしく(美術館などへの貸し出しを考えていた)、収蔵庫(約1000平方メートル)に対して展示室(約160平方メートル)は異様に小さい。だからひとつのテーマで展示するときも2、3回に分けることが多い。今回も3期に分けたうちの後期の展示。タイトルどおり、近世の名所絵から山水画、真景図、近代以降の風景画まで、風景画の変遷をたどっている。出品は江戸期の雲谷派による《唐土名勝図屏風》、明治期の石油の産出現場を描いた児玉果亭の《石脳油産地之真景》、山本森之助による印象派風の油絵《夾竹桃》、丸山晩霞の美しい水彩画《犀川の秋》など、珍しい絵ばかり計12点。数も少ないし、入場無料だし、みんな気楽に見ている。
2017/06/24(土)(村田真)
《おりづるタワー》
[広島県]
三分一博志が関わった《おりづるタワー》へ。古いビルのリノベーションで、丘を登って世界遺産のエリアを見下ろす展望台、スロープ+滑り台+階段などの空間体験がユニーク。前者は屋外だけど、天井が張り出すことで通常と異なる場に。後者はぐるぐる歩いて降りるのが楽しい(滑る子どもや大人も多い)。
2017/06/24(金)(五十嵐太郎)
《広島平和記念資料館》
[広島県]
本館は改修工事中だが、東館は展示がリニューアルされている。パノラマ的な風景写真、原爆投下の前後やその瞬間を表現する円形の都市模型へのプロジェクション、インタラクティブな映像・情報検索のシステムなど。悪くないけど、すごく良いわけでない。文字が多すぎるかな。
2017/06/24(金)(五十嵐太郎)
村野藤吾の建築─世界平和記念聖堂を起点に
会期:2017/05/16~2017/07/09
広島市現代美術館[広島県]
(いまならスキャンダルになるであろう)コンペをしたものの結局、審査員が設計してしまった世界平和記念聖堂のドキュメントが面白い。村野のファサード案もいろいろダメ出しされていたのか。後半は、目黒などでも開催した模型展示だった。
2017/06/24(金)(五十嵐太郎)
「洸庭」名和晃平|SANDWICH 図録刊行記念対談
会期:2017/06/25
神勝寺 無明院[広島県]
名和晃平×五十嵐で『洸庭』図録刊行記念対談@神勝寺無明院。今回、対談を通じて新しく知った事実について記しておきたい。あいちトリエンナーレ2013における彼の作品《foam》(最近、PerfumeのCMで似たセットが使われているが)になる前の別プランが、じつは闇の中で床いっぱいに水をしくものだった。結局、納屋橋の会場では闇が十分でなく見送ったが、これが発展して《洸庭》につながった。そして、もうひとつ思い出したことがあった。彼がキリンアートアワード2003に入賞したとき、筆者は審査員でその受賞展の担当だったが、「PixCell」の展示で彼が空間にとてもこだわり、影がでない特別な白い部屋を設けたこと。つまり、作品を単体で考えず、いかなる環境で見せるかを最初から重視していたのである。それを突き詰めると、今回のプロジェクトのように、建築をまるごとつくることに発展するのは必然だろう。
2017/06/25(土)(五十嵐太郎)