artscapeレビュー

2017年07月15日号のレビュー/プレビュー

通天閣

[大阪府]

大阪の通天閣へ。外からは何度も見ていたが、内部に入り、登るのは初めてだった。時流を反映し、海外のお客さんが多い。ともあれ、まわりの建物が低いこと、また通りの先に位置しているおかげで、通天閣を見上げながら近づくので、いまだ塔としての存在感を失っていない。もちろん、現在ならアイコン建築と呼ばれるような造形の強さもある。それにしても、室内はビリケン以外にいろんなキャラがごちゃまぜで混在し、すさまじくカオティックな空間だった。

2017/06/07(水)(五十嵐太郎)

ピエール・スーラージュ展

会期:2017/06/07~2017/08/19

ギャラリーペロタン東京[東京都]

パリを本拠にするギャラリーペロタンが、香港、ニューヨーク、ソウルに続いて六本木に東京店をオープン。海外の有力ギャラリーの出店は、その都市のアートマーケットの成熟度を知るバロメーターにもなるから、アジアでは香港とソウルに先を越されて悔しがるべきか、それとも上海やシンガポールより早かったと胸をなでおろすべきか。なんてことに一喜一憂してる場合じゃないけどね。場所は六本木ヒルズや小山登美夫ギャラリーの近くで、ワコウ・ワークス・オブ・アートやオオタファインアーツも入ってるピラミデの1階。まあここらへんは森ビルの傘下だからな。エントランスには村上隆からの花も。
オープニング記念展は戦後フランスを代表する画家の一人、ピエール・スーラージュ。アンフォルメルの時代から頭角を現わし、日本でも西武美術館をはじめ何度か個展が開かれてきたが、驚くことにまだ健在で、今年98歳になるそうだ。そういえば4半世紀ほど前にパリのギャラリーでたまたま彼の個展に出くわしたことがあるが、ほかに客が一人もおらず、彼の時代がとっくに過ぎ去ったことに感慨を抱いたものだ。それが東京店のオープニングを飾るとは、いまの具体やもの派のリヴァイヴァルと同じく50-60年代の美術が再評価されてるせいだろうか。作品はすべて黒一色に塗り込めた絵画で、縦横斜めにタッチを入れたり、点状にマーキングしたりしたもの。スーラージュはこれまで何度も来日し、1992年には高松宮殿下記念世界文化賞を受賞。今回は『スーラージュと日本』という画集も出すというから、日本との接点を強調して売り込もうってか。

2017/06/08(木)(村田真)

あゝ新宿 アングラ×ストリート×ジャズ展

会期:2017/06/03~2017/07/02

新宿高野本店ビル6階[東京都]

新宿高野といえば、タカノフルーツパーラーを擁する老舗の果物専門店だが、会場となった6階は美術館でもギャラリーでもない単なる空きフロアらしく、安普請の仮設壁が展示内容にマッチしている。同展は、60-70年代の新宿を舞台にしたアングラ劇場やストリート文化を捉えた井出情児の写真を中心に、演劇のポスターやチラシも展示。新宿花園神社に赤テントを張った唐十郎率いる状況劇場、清水邦夫と蜷川幸雄の現代人劇場、鈴木忠志の早稲田小劇場、寺山修司率いる天井桟敷。ピットインの山下洋輔、横尾忠則の姿もある。演劇が多いのは、早稲田大学演劇博物館の主催だからだ。できたばかりの新宿西口広場に集う若者を捉えた写真もある。そんな若者たちを排除するため、姑息なオトナたちは「広場」を「通路」と呼び変えて、立ち止まったりたむろしたりすることを禁じてしまった。右と左、敵と味方、オトナと若者といったように社会がいまよりわかりやすかった時代だ。かろうじてぼくも知ってる新宿のなつかしい表情に出会えた。

2017/06/08(木)(村田真)

オープン・スペース 2017 未来の再創造

会期:2017/05/27~2018/03/11

NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)[東京都]

今年もメデイア・アートの新作が揃うが、過去にもあったような試みのバージョンアップ的なプロジェクトよりも、その作品自体が科学や社会のトピックに絡み、なおかつ美しさをもつタイプが好みである。それゆえ、アメリカにおける女性と銃弾に関する意外な切り口を提示するオーラ・サッツの《銃弾と弾痕のあいだ》の映像とインスタレーションが印象に残った。

2017/06/09(日)(五十嵐太郎)

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オープンスタジオ2017

会期:2017/06/09~2017/06/18

BankART Studio NYK[神奈川県]

BankARTの2、3階のほぼ全フロアをアーティストに貸し出すレジデンス・プログラム。今年は長期滞在アーティストも含めて計45組が参加、その成果発表が行なわれている。片岡純也+岩竹理恵は昨年もトボケた作品をつくってうならせてくれたが、今年も多彩な作品を見せてくれた。なかでも、浮世絵(春画)から使用済みの丸めたチリ紙の画像をピックアップして並べた作品が出色。なにが出てくるかわからないところが期待できる。
山田哲平はスピーカーを10台ほど下向きに吊り下げ、そこからたくさんの赤い糸を垂らし、中央に聴診器を置いている。中心に立って聴診器を胸に当てると、心臓の鼓動が増幅されてスピーカーから鳴り、赤い糸をリズミックに揺らす。赤い糸はまるで血流のようだ。これはよくできている。その隣の丸山純子は、コンビニ袋で花をつくったりプラスチックを溶かしたり石鹸を固めたり、いろいろやってきたが、最近は「の」の字型の渦巻きを紙にびっしり埋め尽くしていくドローイングを制作。なんだか草間彌生か真島直子に近づいてるようで怖い。
関川航平は壁いっぱいに文章を書いた紙を貼りつけていた。たしか、文字を書きながらその時々に思ったこと見たことなども書き連ねていく、というようなコンセプトだったと思う。単線的な文章=時間の進行を複線化する試みと理解したが、あまり読む気になれないし、読んでもおもしろくない。でもなにか表現することのためらいや恥じらいを感じさせる。陳亭君と鈴木紗也香はそれぞれ2階と3階にブースを借りて絵を描いていたが、画風こそ違えど、図らずも画中画のある室内風景をモチーフにしているところは同じ。どちらもアラサーと年齢も近く、各地でレジデンス経験を積んでいることも共通している。こんなことってあるんだ。

2017/06/09(金)(村田真)

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