artscapeレビュー
2023年06月01日号のレビュー/プレビュー
カタログ&ブックス | 2023年6月1日号[テーマ:縄文人の暮らしから現在を照らし出す5冊]
日本各地で発掘された膨大な数の出土品を長年撮影し、考古学など研究の領域にも寄与してきた写真家・小川忠博(1942-)。近年のものも含め魅力的な写真を集めた「縄文 小川忠博写真展」(秋田県立近代美術館にて2023年6月30日まで開催)にちなみ、縄文時代の暮らしにさまざまな角度から思いを馳せられる5冊を選びました。
今月のテーマ:
縄文人の暮らしから現在を照らし出す5冊
1冊目: 新版 縄文美術館
Point
土器や土偶など縄文時代のものを中心とした出土品の写真がずらりと並び、エネルギッシュでユーモラスなそれらの魅力を直に体感させてくれる、小川氏の仕事を代表する一冊。採集や装飾、文様といった複数の面から縄文人の暮らしを読み解く解説文も豊富で、本を開く前よりも縄文時代に対する解像度が大幅に上がっているはず。
2冊目:土偶美術館
Point
縄文の出土品全般を広く扱った1冊目に対し、本書はヒトガタの造形をもつ土偶たちに焦点を当てた写真集。「土偶」とひと口に言っても、祈りの姿や笑顔のもの、果ては出産中の女性の様子をかたどったものなど、ここまで豊かなバリエーションがあること、そしてその一つひとつのチャーミングさにただひたすら圧倒されます。
3冊目:土偶を読むを読む(縄文ZINE Books)
Point
コレクションの初期は平面作品が中心だったというタグコレ。巨匠ホックニーと美術批評家マーティン・ゲイフォードとの対談形式で進む本書は、図版も豊富に参照しながら写真やデジタル画像、映像との対比で名作絵画を紐解いていくうちに、絵画という表現の独自性が浮き彫りに。現代の視点に立った、絵画史入門に最適な一冊。
4冊目:民藝図鑑 第1巻(ちくま学芸文庫)
Point
「どんな品々を私達が美しいと見るかを、知って貰い度(た)かった」(序文より)。民藝運動を先導した柳宗悦たちが「民藝」とは何かを改めて示すために纏めた蒐集品図鑑。縄文土器も数点紹介されており、生活のなかで必要に駆られつくられ、使われてきたものの美しさという視点から近代までの長い時間軸を横断できる一冊。
5冊目:土の中からでてきたよ
Point
「知りたいことは土の中。縄文人は土の中」。子供から大人まで年齢を問わず、縄文、そして大昔の人々の暮らしを知るための発掘・研究のただならぬ魅力を感覚的に教えてくれる絵本。小川氏の写真をふんだんに配した紙面は隅々まで楽しく、小川氏によるリズムに富んだ力強い文章は、ついみんなで声に出して読みたくなります。
縄文 小川忠博写真展
会期:2023年4月22日(土)~6月30日(金)
会場:秋田県立近代美術館(秋田県横手市赤坂字富ケ沢62-46)
公式サイト:https://common3.pref.akita.lg.jp/kinbi/
2023/06/01(木)(artscape編集部)