2021年08月01日号
次回9月1日更新予定

artscapeレビュー

2010年08月01日号のレビュー/プレビュー

パラモデルの 世界はプラモデル

会期:2010/06/26~2010/08/01

西宮市大谷記念美術館[兵庫県]

パラモデルといえば玩具のプラレールを用いた無限増殖的なインスタレーションが思い浮かぶ。しかし、彼らは絵画、写真、映像、立体の小品など、さまざまなジャンルの作品を発表している。本展はそんな彼らのバリエーションを網羅的に示した点に意義がある。もちろんインスタレーションも実施されており、プラレールのほかパイプを用いた大作も見られた。ただ、彼ら自身が直接作業をする中小企業的な制作スタイルは、規模的にそろそろ限界ではないか。これ以上になるとゼネコンよろしく下請けを使いこなす方向に移行せざるをえないかもしれない。その意味でも、本展はパラモデルの重要な折り返し点と位置付けられる可能性がある。

2010/07/01(木)(小吹隆文)

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『ザ・ウォーカー』

会期:2010/06/19~2010/07/22

丸の内ピカデリー[東京都]

アルバート・ヒューズ、アレン・ヒューズ監督作品。出演はデンゼル・ワシントン、ゲーリー・オールドマンほか。マッドマックス的な近未来世界を描いたアクション映画だが、クリアでシャープな映像と不自然なほど小奇麗なファッションのおかげで、どうにもMTVのような軽さを感じてならない。そのため、物語の重要なアイテムとなっている「聖書」の存在が奇妙に浮き足立ち、結果的に物語のすべてがキリスト教賛美のイデオロギーに回収されてしまった。中国やアラブ諸国の急成長によって脅かされつつある西洋社会の合理的な秩序を世界に再建しようとする「保守反撃」の映画に見えた。

2010/07/01(木)(福住廉)

ロトチェンコ+ステパーノワ─ロシア構成主義のまなざし

会期:2010/07/03~2010/08/29

滋賀県立近代美術館[滋賀県]

ロシア構成主義の巨匠ロトチェンコは知っていたが、彼の妻ステパーノワも優秀な作家だったとは、恥ずかしながら知らなかった。2人の代表作が見られた本展は、絵画、立体、舞台美術、書籍、ポスター、プロダクト、建築、写真など170点が並び、質・量ともに大いに充実。良い意味で予想を裏切ってくれた。作品はロシアのプーシキン美術館及び遺族の所蔵品で、前者もほとんどが遺族から寄贈されたものだ。前衛美術はソビエト時代に弾圧されたはずだが、遺族はどうやって作品を守ってきたのだろう。公にしなければ当局も黙認してくれたのか、それともレジスタンス的に密かに守り続けたのか。ロシアから来日した学芸員に質問したのだが、こちらの真意がうまく伝わらなかったのが残念だ。

2010/07/02(金)(小吹隆文)

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中岡真珠美 展

会期:2010/07/05~2010/07/17

O ギャラリー eyes[大阪府]

中岡の作品は一見抽象画に見えるが、実はアトリエ周辺の風景などを組み合わせて再構成したものだ。ところが新作では作風が一転、採石場や道路沿いののり面など、モチーフがあからさまに登場していた。これにはアトリエの移転が大きな影響を与えている。今まで大阪の中心部に構えていたアトリエを、1年間限定で日本海沿いの田舎町に移したのだ。新アトリエでの制作はあと半年間続くので、彼女の作風が更なる進化を遂げる可能性もある。次の個展でどんな作品が見られるのか、今から楽しみだ。

2010/07/05(月)(小吹隆文)

詫摩昭人 展 逃走の線─サハラへ

会期:2010/07/01~2010/07/06

紀伊國屋画廊[東京都]

一見するとモノクロームの風景画。だがよく見ると、画面の全体に無数の線が垂直方向に走っている。作家によれば、油彩が乾かないうちに刷毛を一気に引きおろすのだという。サハラ砂漠の荒涼とした光景は、おびただしい線条によって、あたかも砂漠に雨が降っているかのようにも見えるが、対象の輪郭をあえて漠然とさせることに「逃走の線」というコンセプトのねらいがあるようだ。それは対象を写実的に再現することから逃れ、あるいは抽象化の手続きに則ることからも逃れるために開発された絵画的な方法なのだろう。今回の場合は寂寥感のある光景だったため、直線による茫漠がロマンティシズムとあまりにも直接的に結びついていたように思われたが、別のモチーフでは意外な効果が生まれるかもしれない。

2010/07/05(月)(福住廉)

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