2021年08月01日号
次回9月1日更新予定

artscapeレビュー

2010年08月01日号のレビュー/プレビュー

束芋:断面の世代

会期:2010/07/10~2010/09/12

国立国際美術館[大阪府]

横浜美術館で開催された個展の巡回だが、会場構成と一部の作品の展示スタイルが異なっており、横浜とは一味違う仕上がりとなった。特に迷路のような導線は、束芋の世界観とシンクロして効果的だった。映像作品は前半の団地をテーマにしたものと、後半の内省的な作品に二分されるが、筆者は後半の作品に可能性を感じた。デビュー以来、現代社会に対するシニカルな批評性云々で語られてきた束芋だが、その固定化した肩書きをもうそろそろ外してもよいのでは。展覧会の中間部には新聞小説『惡人』の挿絵がずらりと並んでおり、実に壮観。線の魅力こそ彼女の最大の魅力だと改めて実感した。また、『惡人』からインスパイアされた映像インスタレーション《油断髪》が放つ不穏な気にも圧倒された。

2010/07/09(金)(小吹隆文)

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HEAVEN 都築響一と巡る社会の窓から見たニッポン

会期:2010/05/22~2010/07/19

広島市現代美術館[広島県]

編集者で写真家の都築響一の展覧会。『TOKYO STYLE』をはじめ、『ROADSIDE JAPAN─日本珍紀行』『巡礼~珍日本超老伝~』など、これまでの都築の活動を一挙に振り返る構成で、ちょうど一冊のスクラップブックのように編集された展覧会は、混沌としていてじつに楽しい。じっさい、出品された作品の大半は写真だったが、それらを解説する短いテキストが添えられていたから、観覧者はおのずと写真を「見る」というより、「読む」ように仕向けられていた。かつて井上雄彦が美術館を丸ごと漫画に見立てたように、おそらく都築は美術館を一冊の雑誌に仕立て上げようとしたのだろう。じっくり読み進めていくと、なるほど奇妙な物体や奇人の視覚的なインパクトを楽しむだけでなく、それらの背景にひそむ物語の一端を垣間見ることはできる。とはいえその一方で、それらの情報はあくまでも水平的であり、ある一定の水準以上に深まっていくことはないのも事実だ。秘宝館のエロティックなインスタレーションを制作した作り手の姿は展示から見えてこないし、今回の展覧会を象徴するイメージとして採用された広島在住のホームレス、広島太郎にしても、突っ込みが甘いといわざるをえない。公立美術館で発表することのさまざまな制約を差し引いたとしても、得体の知れない人や物を発見して、それらを世間に伝えたいという「熱」がさほど強く感じられなかったのは、いったいどういうことなのだろうか。すでにある程度のキャリアを積んでいる都築が、いつのまにか「型」に収まってしまったということなのか、それともそうした「熱」を必然的に冷ましてしまう美術館という文化装置に由来しているのか。正確なところは知るよしもないが、その「熱」を浴びたことのある読者としては「もっと見たい、もっと見せろ、もっとやれ!」と思わずにはいられない。

2010/07/09(金)(福住廉)

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収蔵庫開帳! 広島ゆかりの作家たち 選・都築響一

会期:2010/04/24~2010/07/11

広島市現代美術館[広島県]

同館が所蔵するコレクションを都築響一が選び出した展覧会。鑑賞者がみずからの眼で作品の良し悪しを判断する機会は、すべての作品に平等に与えられなければならないという考えのもと、収蔵庫に長く眠っていた日陰のコレクションを「御開帳」した。25名ほどの出品作家は、なるほど、ほとんど知られていない「ローカル・ヒーロー」ばかりである。たしかに美術館の知られざるコレクションを公開したことは画期的だし、美術館の英断も評価できる。ただ、それらを従来の展覧会と同じように展示するだけでは、「鑑賞者がみずからの目で作品の良し悪しを判断する」ことは難しいようにも思う。ありていにいえば、それらの作品はどれもおしなべて凡庸に見えてしまうからだ。むしろ、それぞれの作家の経歴を今以上に深く調べ上げ、その物語とともに作品を見せるような仕組みを用意すれば、作品を見る取っ掛かりが増えるのではないだろうか。客観的で中立的な展示の態度が、鑑賞者の自由な判断をもたらすとはかぎらない。逆に、選者の明確な意図を込めた斬新な展示手法のほうが、鑑賞者の眼や思考を刺激することもなくはないだろう。たとえば同館でかつて催された市民キュレイターによるコレクション展は、支離滅裂で破天荒な展示手法がかえって新鮮だった。コンセプトが野心的で魅力的だっただけに、非常に残念である。

2010/07/09(金)(福住廉)

武盾一郎 Real FantASIA

会期:2010/07/09~2010/07/18

gallery TEN[東京都]

ストリートのアーティストとして知られる武盾一郎の初個展。新宿西口や渋谷の路上、神戸の被災地で絵を描いては発表してきた武にとって、画廊での個展は初めてだという。展示されていたのは緻密に描き込まれたペン画で、その細密な線の集積と空虚な余白の対比が美しい。一見すると近頃流行の細密画の一種にしか見えないが、武の制作と発表の場の大半が路上だったことを考えると、この対比は鬱積した内面とそれを容易には受け入れない無情な社会の対立を表わしているように見えなくもない。画廊制度に則ることなく、剥き出しの路上で絵を描くことの厳しさを見る者に突きつける、痛々しいまでの気迫にあふれた展示だった。

2010/07/15(木)(福住廉)

川俣知子 日本の少女たち

会期:2010/07/12~2010/07/17

Gallery K[東京都]

背景を描き込まないまま、シンプルな線でセーラー服の少女などを描いた絵。彼女は電車の車内で痴漢行為の被害に遭っているが、よく見ると目玉には「¥」のマークが入っており、口元には笑みさえ浮かんでいる。90年代的な援交文化の再現とも言い切れない、なにやら得体の知れない謎を見る者に残す絵だ。

2010/07/15(木)(福住廉)

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