artscapeレビュー
2010年08月01日号のレビュー/プレビュー
プレビュー:龍門藍・桝本佳子 展「Mélange」
会期:2010/08/06~2010/08/28
imura art gallery[京都府]
京都をベースに活動する若手作家2人の競演。画家の龍門は少女人形をモチーフにした作品や、顔にストッキングをかぶせたような図像の作品で知られるが、今回は高さ180センチ×幅330センチの大作をはじめとする新作油彩画5~7点を出品。陶芸の桝本は装飾と造形の関係を問い直すような作品で注目されており、本展では関西未発表の作品4点を展示する予定だ。
上:龍門藍《生け花》2010年 162cm×130cm oil on canvas
下:桝本佳子《松/壷》2010年 90cm×150cm×50cm ceramic
2010/07/20(火)(小吹隆文)
プレビュー:ARTであしあと1 油画卒業・修了作品
会期:2010/08/07~2010/08/29
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA[京都府]
1986年から2000年にかけて京都市立芸術大学の油画専攻を卒業・修了した作家たちの卒業制作を展示する。今も活動を続ける彼ら彼女らの、当時の息吹を改めて見る貴重な機会となりそう。同ギャラリーでは今後もこの企画をシリーズ化して継続するそうだ。130年の歴史を持つ伝統校だけに、切り口次第で魅力的な企画展が幾つもつくれるだろう。できれば油画以外のジャンルにも拡大してほしい。
2010/07/20(火)(小吹隆文)
プレビュー:あいちトリエンナーレ2010
会期:2010/08/21~2010/10/31
愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、長者町会場、納屋橋会場[愛知県]
越後妻有のキーワードが「地方」と「農村」、瀬戸内国際芸術祭のそれが「離島」と「リゾート」なら、あいちトリエンナーレは「都市」と「祝祭」のアートイベントになるだろう。名古屋の都心部に集中的に会場を配し、国内外の約130組のアーティストが新作を次々と発表。アートを通じた一過性のハレの空間が夏の名古屋に出現するのだ。ビジュアル・アートとパフォーマンス・アートの比重が拮抗しているのも他のアートイベントにはない特徴だ。自然回帰やゆとり志向とは逆ベクトルの、ウェルメイドな都市型アートイベントとしてどのような評価を獲得するのか、今から楽しみだ。
2010/07/20(火)(小吹隆文)
森村泰昌モリエンナーレ まねぶ美術史
会期:2010/07/17~2010/09/05
高松市美術館[香川県]
「瀬戸内国際芸術祭2010」で盛り上がる高松で、もうひとつ見逃せないのがこちら。本展は、名画や歴史上の人物に扮した作品で知られる森村泰昌のルーツに迫れる展覧会だ。彼が学生時代から無名時代にかけて描いた、美術史上の巨匠や先達のスタイルを真似して描いた作品を、その元ネタと並べて展示している。ギター少年は練習のために好きな曲をコピーするが、美術家でも同じようなことをする人がいたとは驚きだ。しかも凄いのはその量とジャンルの幅広さ。洋の東西を問わず、20世紀美術をむさぼるように真似て創作の血肉としていたのだ。美術家・森村泰昌の基盤にこうした無数の真似び(=学び)があること、そして美術への深い愛があることを初めて知った。本展を見ると、彼が現在の作風に至った必然性がよくわかる。そして展覧会のクライマックスは、田中敦子の《電気服》と、森村の《光と熱を描く人/田中敦子と金山明のために》の共演だ。ともに大阪の鶴橋を拠点に活動し、個人的にも交流があった両人。尊敬する先輩にオマージュを捧げたその空間は、本当に感動的だった。
2010/07/20(火)(小吹隆文)
SickeTel キュピキュピと石橋義正
会期:2010/07/18~2010/11/03
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館[香川県]
奇抜なパフォーマンスや映像作品で知られるキュピキュピが久々に再始動。その主宰者で、現在はテレビ番組『オー!マイキー』で知られる石橋義正とのダブル個展の形式で展覧会が開催された。会場は前半がキュピキュピ、後半が石橋に二分されている。キュピキュピの作品は、ステージ状の空間で繰り広げられる映像インスタレーションと、新キャラ「シッケモニカ」のための空間で構成されていた。かつてのような弾けたナンセンスな笑いは抑えられており、ブルーを基調としたムーディーな、しかしどこか虚無をたたえた世界観が新鮮だった。後半の石橋サイドは、《ブラック・リナ》と《ホワイト・スネーク》の映像作品2本立てだった。フェロモン全開で意地悪そうな美女が思いのまま振る舞う《ブラック・リナ》は、まさに石橋作品に登場する女性の典型。一方、《ホワイト・スネーク》は主演女優の身のこなしが素晴らしく、蛇女の存在にリアリティを与えていた。美術館がある丸亀市は「瀬戸内国際芸術祭」が開催されている高松市から電車で約20分の距離。芸術祭に出かけたなら、面倒がらずにこちらにも足を延ばすべきであろう。
2010/07/20(火)(小吹隆文)