2017年08月01日号
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artscapeレビュー

藤原新也の現在「書行無常」展

2011年12月01日号

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会期:2011/11/05~2011/11/27

3331 Arts Chiyoda[東京都]

写真家の藤原新也の個展。旅先で書を行なうシリーズを中心に、被災地をとらえた写真などもあわせて展示した。藤原新也といえば、「人間は犬に食われるほど自由だ」というコピーで知られる写真家だが、その一方で時事問題についても積極的に発言する社会批評家としても活躍している。だが今回の展示で明らかになったのは、アーティストとしての藤原新也だ。世界各地の現場で繰り広げられる書は、さながらアクション・ペインティングのような運動性を感じさせるし、広大な雪原を「春」という形に踏み固め、その上にスプレーで着色したり、筆に見立てた髪の毛に墨汁を滲みこませたヌードモデルを抱きかかえながら書を書くパフォーマンスなどは、まさしくアーティストそのもの。「老いてなお益々盛んな…」と言ったら失礼かもしれないが、ここにきて写真や文章にとどまらず、「なんでもやってやる!」という境地に達したのかもしれない。このアグレッシヴなパワーが来場者を圧倒したのは事実だが、本展における藤原新也のありようは表現や芸術にかかわる者にとってある種のモデルを示していたようにも思えた。このどうしょうもない世界の只中で生きてゆき、やがて死んでゆかねばならない私たち自身には、「なんでもやっていい」という甘えはもはやなく、「なんでもやらざるをえない」という厳しさしか残されていないからだ。であればこそ、文字どおりジタバタしながらもがき苦しみ、そうやって身体を社会に晒して右往左往した先に、この苦境を突破する人間の根源的な生命力を見出すほかない。アーティストのように、いやアーティストとして、あらゆる人びとがたくましく行動しなければ太刀打ちできない時代になってしまったのである。本展で示されていたのは、この危機に身をもっていちはやく対応した人間の記録だったと思う。

2011/11/10(木)(福住廉)

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