2017年10月15日号
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artscapeレビュー

大島成己「Figures」

2015年12月15日号

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会期:2015/11/07~2015/12/02

Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku[東京都]

これまで「風景」や「静物」を中心に作品を発表してきた大島成己が、意欲的に新たな領域にチャレンジしている。今回のYumiko Chiba Associates viewing room shinjukuでの個展のテーマは「人体」である。前作の「haptic green」のシリーズでは、被写体となる「風景」のさまざまな部分を撮影した画像を、スティッチングの手法でひとつの画面に統合/再構築することを試みていた。今回の「Figures」でも、その手法は踏襲されているのだが、見かけの統合性がより強まり、一見するとワンショットで撮影されたポートレート作品に見える。だが細部に目を凝らすと、「人体」の各部分のピントが合っている部分と、外れている部分のバランスが微妙にずれていて、通常の「見え」とは異なっているのがわかる。「haptic green」では、それが目くらまし的な視覚的効果を生んでいたのだが、このシリーズでは、クローズアップが多用されていることもあって、むしろ心理的な衝撃力が強まっているように感じた。
大島は展覧会に寄せたコメントで、「人体の触覚的表面を表現」するというこの作品の意図は、「抽象的な、あるいはアノニマスな存在として完結させるのではなく、そこに固有性が浮かび上がるようにしていきたい」と述べている。「固有性」というのは、単純に人種や性別や社会的な属性だけではなく、「その人自体の存在性」を浮かび上がらせるということだ。たしかに今回の「Figures」では、大島と被写体となる人物との個的な関係のあり方が、その「固有性」として生々しく露呈しているように感じた。この「人体」の探究の試みは、ぜひ続けていってほしい。さらに実りの多い成果が期待できそうだ。

2015/11/21(土)(飯沢耕太郎)

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