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没後100年 五姓田義松──最後の天才

2015年12月15日号

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会期:2015/09/19~2015/11/08

神奈川県立歴史博物館[神奈川県]

数日前に行こうと思ってHPを見たら、カタログが売り切れたため増刷中で、6日の午後1時に納品されるとのことだったので今日にする。まさかみんな同じことを考えていたわけではないだろうけど、今日は平日なのにけっこう混んでいる。五姓田義松のような埋もれた画家の回顧展にこんなに人が入り、地味なカタログがこんなに売れるなんて、主催者も思っていなかったはず。日曜美術館で紹介されたのも大きいけれど、従来の近代美術史ではすくいきれなかった日陰の部分に関心が向いている証ではないか。日陰とは義松の場合、前後に高橋由一と黒田清輝という二つの太陽があって、油絵の先駆者というには由一に及ばず、黒田の持ち込んだ近代絵画には乗り遅れてしまったという端境期を生きざるをえなかったがゆえの日陰だ。絵のうまさからいえば両巨匠よりも明らかに才能豊かだから、本人も歯がゆかったに違いない。ちなみにタイトルにある「最後の天才」とは、再現描写能力において最後ということらしいが、由一が決して天才肌ではなかったことを考えれば「最初で最後の天才」でもよかったと思う。出品作品は、巻末の目録を見るとなんと636点。といっても大半はスケッチだが、それにしても決定版といっていいだろう。画材も油彩、水彩、鉛筆、石版画と多岐にわたり、とにかくなんでも描いている。父の五姓田芳柳をはじめとする家族の肖像、横浜界隈の風景画、身近な情景を描いた風俗画、皇室に求められた風景画や肖像画、《操芝居》などのパリ滞在時の作品、日清・日露戦争図など。いちばん気に入ったのは10人以上の裸の女が登場する《銭湯》。アングルと横尾忠則を足して2で割ったような異様な絵だ。これも含めて、明治時代の日本の風景や風俗の記録としても貴重だろう。

2015/11/06(金)(村田真)

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