2017年05月15日号
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artscapeレビュー

山谷佑介「RAMA LAMA DING DONG」

2015年12月15日号

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会期:2015/11/21~2015/12/19

YUKA TSURUNO GALLERY[東京都]

今回、東京・東雲のYUKA TSURUNO GALLERYで開催された山谷佑介の2度目の個展のオープニングトークで、本人が話してくれたことだが、彼は20代前半までパンク・バンドを組んで活動していたのだという。担当の楽器はドラムスだった。むろん音楽と写真とは直接関係がないが、彼の作品には、明らかにリズム感のよさがあらわれている。例えば今回の「RAMA LAMA DING DONG」のシリーズでも、モノクロームプリントの光と影の配分、似かよったイメージの反復、意表をついたずらし方などに、外界の刺激と内的なリズムとが、全身感覚的にシンクロしていることが感じられるのだ。
タイトルの「RAMA LAMA DING DONG」は、1958年にヒットしたエドセルズのドゥワップ・ナンバーだが、その軽快なリズムに乗せて展開するのは、山谷自身の新婚旅行である。2014年の夏に、山谷と江美のカップルは、北海道から九州・長崎まで約1カ月かけて日本を縦断した。新婚旅行というと、どうしても荒木経惟の名作『センチメンタルな旅』(1971)が思い浮かぶが、あの「道行き」を思わせる悲痛な雰囲気とはほど遠い、弾むような歓びが全編にあふれている。それもそのはずで、山谷が写真を編む時に参照していたのは、奈良原一高のアメリカヒッピー旅行のドキュメント『celebration of life(生きる歓び)』(毎日新聞社、1972)だったという。荒木や奈良原だけでなく、このシリーズにはロバート・フランクやラリー・クラークや深瀬昌久の写真を彷彿とさせる所もある。1985年生まれの山谷の世代は、過去の写真たちを自在にサンプリングできる環境で育っており、自然体で写真史の名作のエッセンスを呼吸しているということだろう。

2015/11/21(土)(飯沢耕太郎)

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