2024年03月01日号
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artscapeレビュー

つくることは生きること 震災 《明日の神話》

2016年12月15日号

会期:2016/10/22~2017/01/09

川崎市岡本太郎美術館[神奈川県]

大災害に襲われたとき、アーティストになにができるのか。そのことが最初に問われたのは阪神淡路大震災のあとだった。その5年後の2000年、前年に開館したばかりの岡本太郎美術館は「その日に─5年後、77年後 震災・記憶・芸術」展を開いた(「77年後」とは関東大震災からの年月)。あれから16年、よりによって太郎生誕100年の年に起こった東日本大震災の5年後、同様の企画展を開くことになった。今度は想定外の原発事故が起こったため、核エネルギーのすさまじさを表現した太郎の巨大壁画《明日の神話》(下図)を中心にして。ここで「おや?」と思ったのは、朝日新聞にも書いたことだが(11/22夕刊)、原発事故に《明日の神話》とくれば、だれもが巨大壁画に原発事故の絵を付け加えたChim↑Pomを思い起こすはずなのに、出品作家にその名が見られないこと。ではだれが出品しているかというと、震災前から東北芸工大の教師と学生を中心に東北固有の絵画を追求している「東北画は可能か?」、津波でアトリエを流され、原発事故で家を追われた木彫家の安藤榮作、地元の被災地を淡々と撮り続ける写真家の平間至と映像作家の大久保愉伊、被災地に駆けつけアートで支援活動を行なう団体アーツフォーホープといった人たちだ。彼らの多くは東北出身か在住だが、震災に対しても原発事故に対しても声高に叫んだり批判したりすることなく、被災者に寄り添い、不気味といっていいほど静かにつくり続けている点で共通している。まさにタイトルのとおり「つくることは生きること」を実践しているのだ。

2016/11/10(木)(村田真)

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