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artscapeレビュー

村越としや「雷鳴が陽炎を断つ」

2016年12月15日号

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会期:2016/11/04~2016/11/26

ギャラリー冬青[東京都]

村越としやは東京・清澄白河のTAP Galleryのメンバーとして活動してきたが、1年半ほど前に脱退した。今後はギャラリー冬青とTaka Ishii Galleryを中心に展示活動を展開していくという。ギャラリー冬青での最初の展覧会として開催された本展には、2009年に6×6判のカメラで撮影された28点の作品が出品されていた。
2009年1月、村越を可愛がってくれた祖母が余命3カ月ということで入院した。それをきっかけに、故郷の福島県須賀川市に折にふれて帰郷し、「祖母との思い出を少しずつ集めるように」撮影し続けたのが本作である。撮影は祖母の死後も続けられ、同年12月31日で一応の区切りをつけた。例によって、山河や家々の佇まいを静かに写しとった作品が並ぶが、どこかレクイエム的な、沈み込むような気分に覆われている。村越の一連の風景写真の中でも、最もパセティックなシリーズといえるかもしれない。
なお、展覧会にあわせて刊行された『tuning and release 雷鳴が陽炎を断つ』(冬青社)は、「家族との思い出がリンク」した小ぶりな写真集シリーズの4作目になる。『雪を見ていた』(2010)、『土の匂いと』(2011)、『木立を抜けて』(2013)、そして本作と続くこの連作は、東日本大震災以後、より切迫感とスケール感を増した村越のほかの写真群とは、一線を画するものになりつつある。彼自身の個人的な記憶との関わりから、新たな世界が開けてきそうな予感がする。

2016/11/16(飯沢耕太郎)

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