2017年05月15日号
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artscapeレビュー

シャルロット・デュマ「Stay」

2016年12月15日号

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会期:2016/10/07~2016/12/25

916[東京都]

シャルロット・デュマはオランダ出身の女性写真家。アムステルダムとニューヨークを拠点に「生存し繁栄するために寄り添う人間と動物、その間に存在する共存関係」をテーマに撮影を続けてきた。2014年にも同じくギャラリー916で、アメリカ・ワシントンのアーリントン墓地の軍用馬を撮影した作品を発表している。その時から彼女の作品には注目してきたのだが、今回の展覧会はより興味深い内容になっていた。
デュマは2012年から、日本国内の8カ所、8種の在来馬を撮影するプロジェクトを開始した。沖縄県与那国島(与那国馬)、同宮古島(宮古馬)、鹿児島県中之島(トカラ馬)、長野県木曽福島(木曽馬)、長崎県対馬(対州馬)、宮崎県都井岬(御崎馬)、愛媛県今治(野間馬)、北海道七重(道産子馬)である。これらの8種は、道産子馬を除いては数十頭から数百頭しか現存しておらず、絶滅の危機にあるという。デュマは6×7判のカメラを手に馬たちにそっと近づき、自分の存在を意識させつつ「ポートレート」として撮影している。親密だが、あくまでも客観的な観察の姿勢を崩さない適切な距離感こそ、彼女の写真の最も重要なポイントのひとつだろう。結果として、馬たちは神秘的かつ神話的な存在として讃えられるのでも、「可愛らしさ」を強調して擬人化されるのでもなく、まさに彼らのオリジナルの「存在」の形を、生々しく露呈した姿で捉えられている。真似できそうでできない、新鮮なアプローチといえる。
写真作品の展示だけでなく、別室では新作のヴィデオ映像作品「NANAE」も上映されていた。道産子馬のゆったりとした生のリズムに寄り添うように、彼らの姿を静かに捉えたこの作品の出来栄えも素晴らしい。なお、展覧会にあわせて、上田義彦の編集で916Pressから同名の写真集が刊行されている。

2016/11/08(飯沢耕太郎)

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