2017年11月15日号
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artscapeレビュー

中村征夫写真展「琉球 ふたつの海」

2016年12月15日号

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会期:2016/10/29~2016/11/24

コニカミノルタプラザ ギャラリーB/ギャラリーC[東京都]

中村征夫といえば、1988年に第13回木村伊兵衛写真賞を受賞した「全・東京湾」、「海中顔面博覧会」の両シリーズなど、水中写真の第一人者として知られている。海中の生きものたちの不思議な生態を、華麗なカラー写真で写しとった写真の人気は、いまなお高い。ところが一方で、中村がモノクロームのドキュメント写真を粘り強く撮り続けてきたことは、あまり知られていないのではないだろうか。その代表作としては、南の島の風土とそこに住む人々の暮らしを柔らかな眼差しで捉えた写真集『熱帯夜』(小学館、1998)がある。今回、コニカミノルタプラザで開催された「琉球 ふたつの海」の出品作「遥かなるグルクン」も、その系譜に連なるものだ。
日経ナショナルジオグラフィック社から同名の写真集も刊行されているこのシリーズで、中村が30年にわたって記録し続けたのは、沖縄の漁師(ウミンチュ)たちのアギヤーと呼ばれる追い込み漁である。小舟(サバニ)を操り、袋網にグルクンのような熱帯魚を追い込んでいく伝統的な漁法も、高齢化や環境異変による漁獲高の減少などにより、いまや続けられるかどうかぎりぎりの状況になりつつある。本作は、いかにも中村らしい、海中から漁の様子を撮影したダイナミックなカットを含めて、モノクロームの力強い表現力を活かした力作だった。やはり日経ナショナルジオグラフィック社から、同時期に写真集が刊行された、撮り下ろしカラー作品の「美ら海 きらめく」とのカップリングも、とてもうまくいっていた。
ところで、前身の小西六フォトギャラリー、コニカプラザの時代から換算すると、60年以上もの長期にわたる活動を続けてきたコニカミノルタプラザは、2017年1月23日でその歴史を閉じることになった。本展が特別企画展としては最後のものになる。2006年にコニカミノルタが写真・カメラ事業から撤退してからも、写真展を開催し続けてきたのだが、これ以上の継続はむずかしいという判断が下されたようだ。残念ではあるが、長年にわたる写真界への貢献は特筆に値する。

2016/11/04(飯沢耕太郎)

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